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アルプスを席捲したピアノの旋律…クラシックの嵐が暑さを飛ばす

アルプスを席捲したピアノの旋律…クラシックの嵐が暑さを飛ばす

Posted August. 07, 2018 09:18,   

Updated August. 07, 2018 09:18

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先月30日午前、スイス・ヴァレー州にある山間村のヴェルビエ。今年で25周年を迎えたヴェルビエフェスティバルの事務局に赤信号が灯った。当日夕方に共演の予定だったピアニストのラドゥ・ルプーの健康が悪化して公演をキャンセルしたのだ。主催側は、ハンガリー出身のピアニスト、シフ・アンドラーシュに急いでSOSを送った。アンドラーシュは、ガボール・ タカーチ=ナジが指揮したヴェルビエ・フェスティバル・チェンバー・オーケストラ(VFO)とたった一度のリハーサルを行った後舞台に上がった。

海抜1600メートルのアルプスの高台に位置するヴェルビエも、地球温暖化の襲撃を避けることができず、日中は気温が30度を超える。エアコンのない音楽テント「サル・ドゥ・コンバン」は、演奏者の交替とは関係なく、1700席を埋め尽くすほど盛り上がった。アンドラーシュが、わずか数時間で準備した曲は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。英国王室から爵位を受けたアンドラーシュ卿は、いつものように求道者のような笑みを浮かべて登場した。1楽章の冒頭、ベートーベン交響曲第5番「運命の動機」と極めて似た3連音を叩く彼の指は、すでに聴衆の目を一箇所に集中させていた。

力強いベートーベンに代わり思索するベートーベンを選んだ彼の音楽は、すでに別世界のものであるかのように、アルバトロスのように飛び上がった。カデンツァの後半で、ひょっとしたらオーケストラが先に出てくるのではないかと、左手を挙げて制御する姿は、巨匠も緊張していることを気づかせた。3楽章が嵐のように通り過ぎると、聴衆は皆立ち上がった。アンドラーシュがアンコールでシューベルトの「ハンガリーメロディ」を、目をそっと閉じて演奏するとき、客席は感動で静まり返っていた。

スウェーデンの公演企画者マルティン・エングストロームは1994年の夏、スキー場で音楽祭を始めた。逆発想は成功につながった。25年後、ヴェルビエフェスティバルは、世界中のトップミュージシャンを一堂に呼び集めて勢いに乗っている。祭りの期間中、人口3000人をやっと超えるヴェルビエは、観覧客と演奏者が入り混じった数万人で賑わう。コンパの場所である「モンポート」に行けば、いつでもソリストとフェスティバルオーケストラの団員に会うことができるほどだ。コンサートとアカデミーを並行する祭りのシステムは、大関嶺(テグァンリョン)国際音楽祭がベンチマークして、韓国国内の夏祭りにも大きな影響を及ぼした。

祭りで韓国演奏者たちの躍進もまぶしい。7月29日、エフゲニー・キーシンが共演したラフマニノフのピアノ協奏曲を演奏したVFOは、ミハイル・プラットネップが指揮したグラズノフバレエ音楽「四季」でレベルの高い音楽を披露した。韓国系団員がなんと15人を占める今年のVFOは、3人の審査委員が世界を回ってオーディションを経た。これらの若者は、ワレリー・ゲルギエフ、ジャナンドレア・ノセダ、クリストフ・エッシェンバッハの教育を集中的に受けた。

ピアニスト、チョ・ソンジンは、25日の夕方に行われた25周年記念のエキシビションコンサートで、キーシン、プラットネップ、アンドラーシュ、ユジャ・ワンなど8人のそうそうたるピアニストと一緒にロッシーニの「ウィリアム・テル」の序曲を、四台のピアノで演奏して世界のトップクラスとなったことを証明した。昨年ヴェルビエで開かれたバンドンプライズコンクールで受賞したピアニスト、キム・ドヒョン(23)も招待され、注目を浴びた。

英国の新古典主義詩人アレキサンダー・ポープは「批評論」で「アルプスの上にアルプスがそびえたつ(Alps on alps arise)」と述べた。2018年の夏、アルプスは音楽でさらに高くそびえたっている。


田承勳 raphy@donga.com