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精神分裂症の「マトリックス治療法」、知っていますか?

精神分裂症の「マトリックス治療法」、知っていますか?

Posted May. 30, 2005 03:26,   

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精神分裂症患者の朴氏(26)はまる3年間、自分の部屋に閉じこもっていた。朴氏は人に会って話し合うことを怖がる。一つのことに少しの間も集中することができない。模擬社会適応訓練さえ難しがる朴氏に「バーチャル・リアリティー訓練法」が施された。

「サイバー精神分裂症クリニック」でディスプレーヘルメットをかぶった朴氏。目の前の闇が一瞬にして明るくなり、立体映像が現われる。医師はモニターと患者を見守りながら状況を設定する。まず、仮想空間の中の人物に近付いて、対話を試みる基本訓練が始まる。

朴氏が「歩行」ボタンを押して仮想空間の中の人物に近付く。近寄りすぎると「負担」と言う音声メッセージが聞こえる。あとずさりして適当な距離まで離れる。しばらくの間「会話」ボタンを押すことをためらう朴氏。結局、仮想人物が先に患者に声をかける。

次は、前にある空席に、先客がいるのかどうかを確認する状況テスト。確認手続きなしに椅子に座ると、すぐ先客が現われて怒る。それで「人が来るまで待つ」を選択すると、椅子に座りたがっている他の仮想人物たちから、非難の目で見られる。

●マトリックスの主人公のように

京畿道廣州市(キョンギド・クァンジュシ)セブランス精神健康病院の仮想現実クリニックでは、仮想現実で訓練を受けるこのようなプログラムが毎日行われている。ここは、世界初の精神分裂専門のサイバークリニックだ。精神健康病院精神科の金ジェジン教授チームと漢陽(ハンヤン)大学医工学校室の金インヨン教授チームが共同開発した「仮想現実、人性リハビリシステム」が運営されている。

映画『マトリックス』で主人公のネオは、仮想現実の中で多様な戦闘訓練を受ける。仮想現実クリニックの患者は、医師が設定する仮想現実に入って現実適応訓練を受ける。中樞神経に繋がる「マトリックス」の仮想現実に比べて臨場感は落ちるが、原理は似ている。

与えられた状況に対して適切な答を選べば、次の課題に移る。間違った答にはそれに相応する困った後続状況が展開される。このような経験を繰り返しながら、患者が自ら行動を矯正できるようにしたのだ。

医師は時々刻々と患者の反応を記録して分析する。ある状況が与えられた後、「歩行」や「会話」などの回答ボタンを押すまでかかる時間は、患者の意志によって変わる。したがってこの時間の記録が患者の状況解決能力を判断する客観的な資料になる。

●安全性と效率性の二兎を追う

国内の仮想現実精神治療は1998年、恐怖症など症状の弱い疾患の治療に初めて導入された。患者に問題になりうる状況を仮想体験させて、患者自ら恐ろしさを乗り越えるようにした。飛行恐怖患者のための仮想飛行機室内環境、高所恐怖治療のための仮想エレベーターなど、多様なプログラムが開発された。

仮想現実治療を受ける恐怖症患者は、実際の環境と同じく多様な身体症状を訴える。しかし、仮想環境に接する回数が増えるほど状態は良くなる。訓練中に患者の状態が急に不安定になった場合、電源操作で直ちにその環境から脱することができて安全だ。

精神分裂症は原因が明確でないだけに、治療も難しい。薬物治療が多くなされ、普通は脳の神経伝達物質であるドパミン分泌を抑制して症状を緩和させる。しかし薬物が他の神経伝達物質に作用して副作用を起こす危険もある。しかし仮想現実による精神治療は、薬物副作用に対する心配がない。

金ジェジン教授は「現在、入院中の20人余りの患者に仮想現実治療を実施している」とし、「拒絶反応なしに大部分興味を持って参加しており、訓練成果も良い方だ」と話した。

●精神分裂症の誤解と真実の間

20代初めの女性が夜遅くまで眠れないまま、暗い部屋の中をうろうろしながら意味の分からないことをつぶやく。

ホラー映画の一場面のようだが、現実世界では決して珍しくない姿だ。幻聴と幻覚に苦しむ精神分裂症は、韓国人口の1%程度が経験する精神疾患。韓国の精神病院入院患者の3分の2以上が精神分裂症の患者だ。

正確な発病原因は究明されていないが、幼年期に生じた脳異常、ストレス、遺伝的要因などが大きく作用するとされている。成長環境、家族との関係、ホルモン欠乏、代謝障害、脳を萎縮させる物質分泌との連関性に対する研究も進められている。

患者によって症状は多様だが、思考が論理的につながらず、途切れることが共通して現われるのが明確な特徴だ。気持ちと考えに一貫性がなく、極端に相反した感情を同時に噴出したりもする。自分の世界の中に閉じこもって、外部との接触を遮断する自閉傾向も見える。

現実を歪曲・理解して信じる被害妄想や誇大妄想、それによる幻覚と幻聴も多く現われる症状だ。「私の耳に盗聴装置が付けられている」と言ってテレビのニュース画面に跳びこんだ男性の話は、精神分裂による被害妄想の有名な事例だ。

明らかな行動変化と違い、性格が変わるように徐々に現われる症状もある。口達者な人が次第にどもるようになるか、感情表現が鈍くなり、いつも無気力で白けた反応を見せたりする。

精神分裂症の治療で最も重要なことは家族の助けと説得だ。患者が自分の精神疾患を認めず、治療を拒否して症状を悪化させる場合が多いからだ。入院して薬物と社会技術訓練など体系的な治療を短期間集中的に受けなければならない。初期に短く入院するほど、社会への復帰が容易だ。

(ヘルプ=三星ソウル病院精神課のホン・ギョンス教授)



孫宅均 sohn@donga.com