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[オピニオン]人殺しに使われたニコチン

[オピニオン]人殺しに使われたニコチン

Posted August. 23, 2016 06:57,   

Updated August. 23, 2016 07:30

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北米インディアンの「呪術師」たちは、占いをする前に、立て続けにタバコを吸った。テントでできた家(ティーピー)が煙で充満し、意識を失った状態で幻覚を見て占ったのだ。呪術師たちは、あれでは死ぬのではないかと、気にかかるほど昏睡状態に落ちても、その翌日になれば気を吹き返した。インディアンたちは、会議前に火をつけた煙草を飲みまわした。出席者たちが命の息吹をささげ、神に感謝し、真実を語るという約束の意味が盛り込まれた儀式だった。会議前に緊張をほぐすための目的もあったのだろう。

◆煙草のニコチン成分は、幸せ感や緊張緩和を招くドーパミンを脳から分泌させる。ニコチンは体内に吸収されてから7秒ぐらいで脳に達するので、たばこを口にくわえて一口深く吸い込めば、手の指が震えるような不安症状が間もなく落ち着く。しかし、体内のニコチンの量は1時間経つと半分に減る。落ち着いた状態を維持するためには、たばこを吸い続けてニコチンを補充しなければならず、中毒に繋がる。ニコチンが認知症や統合失調症緩和に効果があるという前向きな報告もある。

◆煙草の葉っぱに主に含まれるニコチンは、葉っぱを食べる昆虫をよける効き目もある。虫を殺すほどの毒性があるので、一定量を超えれば、人に害を及ぼすこともある。30〜40ミリグラムのニコチンのエキスを一気に吸収すれば、成人は死に至る。注射針の先ほどのニコチンエキス3、4滴が致死量という意味だ。一本にニコチンが1ミリ入っているタバコ40本を同時に吸っても、命に支障はない。フィルターを経て入ってくるニコチンの量は極めて少なく、吸収されたニコチンは肝臓で解毒されるためだ。

◆内縁の男と手を組んで、夫に致死量のニコチンエキスを入れた睡眠剤を飲ませて殺害した40代の女が拘束された。法医学史上ニコチンエキスを殺人道具に使った韓国内初事例となる。昨年は解剖の結果、ニコチン中毒で死亡した50代男性の疑惑死もあった。電子タバコがはやっているので、ニコチンエキスを自分で購入して薄めて使う喫煙者もいる。いくらいいものでも、過ぎたるは猶及ばざるがごとしという知恵を愛煙家たちは忘れてはならない。

異鎭(イ・ジン)論説委員 leej@donga.com