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ヒトラーも好きだった絵

Posted August. 15, 2019 07:34,   

Updated August. 15, 2019 07:34

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一遍の詩は、数十枚の演説より大きな響きと感動を与える。しかし、詩人の人生は容易ではない。19世紀のドイツの画家カール・シュピッツヴェークは「貧しい詩人」で、主人公が直面している生活の様子を赤裸々でありながらウィットをもって表現した絵で、大きな名声を得た。キャンバスの中には、老いた詩人が屋根裏部屋の隅に古いマットレスを敷いて横になっている。口には羽ペンをくわえており、指では何かを数えている。天井から漏れる雨水を防ぐために傘は広がっており、彼が書いた文の束は、薪の代わりに使われた。天才的な詩人の理想化された姿ではなく、彼が直面した貧しい現実を示している。

絵は、芸術家の劣悪な状況への社会的批判の声が含まれているが、絵の中の詩人は決して不幸には見えない。自ら選んで選んだ人生だからだ。詩人が頭にかぶった円錐形の帽子は、フランス革命のときに自由と抵抗の象徴となったフリージアの帽子を連想させる。これは、社会的規範と慣習に抵抗し、自由と欲望を実現するために自発的に貧困を選んだ詩人の意志を示している。また、絵は、「満足な豚より不満足なソクラテス」というジョン・スチュアート・ミルの名言を連想させる。物質的欲望にとらわれず、精神的楽しさを追求すべきだという時代の精神を反映したものだ。

シュピッツヴェークは、元々薬剤師だったが、25歳の時、父の遺産を譲り受けた後、専業画家となった。独学で絵を学んだ彼は、当時、ドイツ中産階級の人々の日常や社会の姿を辛辣に風刺した絵を多く描いたが、作家の狙いが分かる人は珍しかった。絵の中のキャラクターがとても情感があり、面白く表現されているので、人々の心を捕らえたからだ。独裁者ヒトラーまでが、彼の絵が一番好きだった。とある世論調査によると、ドイツ人がモナリザの次に好きな絵が、まさにこの絵だ。自由と理想のために喜んで現実的な困難に耐える詩人の姿は、ドイツ人のアイデンティティを代弁するアイコンとして、今もなお多く人々から愛されている。



キム・ソンギョン記者 tjdrud0306@donga.com