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独首相の演説妨害にも口を塞がない

Posted March. 27, 2024 08:54,   

Updated March. 27, 2024 08:54

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先週、ドイツではショルツ首相の演説が物議を醸した。ショルツ氏は20日、ライプツィヒで開かれた図書展で演説を始めたが、何度も中断しなければならなかった。演説中に3人の観衆が交代で大声を上げたからだ。首相室やイベント主催者にとっては小さな事故ではなかった。

ソーシャルメディアに拡散された動画を見ると、ある女性が突然席から立ち上がり、英語で40秒以上「ショルツさん、あなたは民主主義を論じることはできない。あなたが集めた金と兵器が、ガザと西岸地区の数千人のパレスチナ人を殺している」と叫んだ。これで終わりではなかった。別の方から一人の男性が立ち上がり、「イスラエルに兵器を送るのはやめろ」「あなたは(戦争の)共犯者だ」と叫んだ。別の女性もドイツ語で約40秒間、怒りに満ちた声を上げた。

首相の演説が何度も中断されるアクシデントに、首相室など関係者はどう対応したのだろうか。英語で演説した女性には、イベント管理者と思われる中年の女性が近づき、説得を始めた。至近距離で撮影された動画でも聞こえないほど小声で女性を説得した。最後に出てきた男性は結局、警備員に連れられて会場を後にした。しかし、繰り返される怒鳴り声にも、最近国内で話題になっているような口を塞ぐことはなかった。この男性は、会場から退場させられる瞬間まで約20秒間、首相を非難した。

おそらく、ドイツ首相室も内心は強硬に対応したかったのかもしれない。最近、ショルツ氏は景気低迷に加え、ハマスと戦争中のイスラエルを初期に支持したことで人気が下がり、神経を尖らせている。昨年9月の世論調査で支持率が17%まで急落し、最近も20%台と回復していない。回答者の64.3%が「ピストリウス国防相に首相になってもらいたい」と答え、ショルツ氏に屈辱を与えた。

このようなムードにもかかわらず、ショルツ氏は感情的に対応しなかった。しばらく演説を中断し、客席から出てきた反対の声を聞いた後、「叫ぶことと民主主義を混同するのは正しくない」とし、「この場に出席したすべての方に、この対話とこのイベントに参加する機会を与えることを改めてお願いする」と述べた。これに対してブーイングもあったが、多くは冷静に拍手を送った。現地では、「首相が冷静さを失わず、うまく対応した」という評価が出ている。

むろん、ドイツでも首相の演説を妨害した人たちに対する批判がないわけではない。しかし、多少マナーが悪かったとしても、「表現の自由」という大義に賛同する反応がはるかに多い。ドイツも過去、国家と民族を前面に押し出して個人の自由を抑圧した全体主義の歴史を経験している。そのため、誰の口もむやみに塞いではならないという社会的合意がある。もし、首相の演説を妨害した市民がどこかのように口を塞いで制止されたら、ものすごい逆風が吹いただろう。

別の欧州の指導者も同様だ。不利な状況に陥っても意思疎通を止めない。ショルツ氏に負けず劣らず、最近国民に人気がないフランスのマクロン大統領もそうだ。卵を投げつけられ、さらには頬を叩かれながらも、現場に駆けつけ、対話を試みる。マクロン氏が20%台の支持率にもかかわらず、年金改革、移民改革など各種改革リレーを続けることができる原動力は、このような絶え間ない意思疎通の努力のおかげだというのが現地の反応だ。

マクロン氏が3年前、市民に頬を殴られた直後の現地インタビューで言った言葉は、今の韓国の政界に良い忠告となる。「国民の中には常に(暴力的な)少数派がいる。しかし、圧倒的多数は根本的な問題に関心を持っている。だからこそ、私は議論を止めない」。根本的な答えを見つけるためには、意思疎通を止めてはいけないということだ。