Go to contents

失ったものと得たもの

Posted December. 01, 2022 08:46,   

Updated December. 01, 2022 08:46

한국어

胸の谷間がちらっと見える黒いドレスを着た女性が、両手を丸く組んで立っている。ジョン・シンガー・サージェントが描いたこの印象的な肖像画の中のモデルは、イザベラ・スチュアート・ガードナー。19世紀後半、米ボストンで最も有名だった伝説的な美術品コレクターだ。当時、女性としては珍しく富と名声、業績まで積み上げたにもかかわらず、なぜか目は悲しく見える。どんな事情があったのだろうか。

サージェントは米国の画家だが、生涯の大半をパリやロンドンなど欧州で活動した。肖像画で国際的な名声を得たうえ、立派なマナーと完璧なフランス語能力のおかげで、富裕層の顧客に人気が高かった。

彼が、ガードナーの肖像画を描いたのは、初めてのボストン訪問の時だった。画家は48歳の中年夫人の切ない目つきと表情、何よりも砂時計のような体つきを強調して描いた。官能的でありながら悲しそうな姿だ。おそらく、これはモデルの人生を絵に投影したためと見られる。ニューヨークの裕福な家に生まれたガードナーは、20歳でビジネスマンのジャック・ガードナーと結婚後、ボストンに定住した。幸せな生活もつかの間、相次いで子供を失い、うつ病にかかった。結婚してから5ヶ月後に、第一子を死産したのに続き、3年ぶりに産んだ息子まで2歳になる前に亡くなった。数ヵ月後、友人だった義姉まで死亡すると、もう一度流産した。喪失の悲しみに完全に蝕まれていた頃、夫婦は医師の助言に従ってヨーロッパやロシアなどに旅立った。ガードナーは旅行をしながら美術に目覚め、レンブラントやフェルメールなどの作品を購入した。美術は救いだった。うつ病から抜け出し、彼女の穴の開いた人生も芸術でようやく埋まった。

失うものがあれば得るものもあるもの。ガードナーは子供を失ったが芸術と名声を得たし、彼女が生涯集めた作品で満たされた家は、米国初の私立美術館の一つで、今もボストン市民から多く愛されている。