Go to contents

今日も無事に

Posted December. 03, 2020 08:48,   

Updated December. 03, 2020 08:48

한국어

白い寝巻きを着た子供が、ひざまずいて両手を合わせて祈っている。大きな目は、切実さに満ちている。ところで、この絵、なんだか見覚えがあるのではないか。そうだ。1970年代から80年代に、タクシーやバスの運転席の前に時々かかっていた「今日も無事に」の絵だ。数多い複製画のため、韓国では「床屋の絵」のように認識されているが、実はこの絵を描いたのは英国の上流層だ。

ジョシュア・レノルズは、18世紀の英国画壇の最も影響力のある肖像画家だった。田舎出身で、正規教育は受けなかったが、才能を見抜いた姉たちの支持と支援で、画家として成功することができた。結婚した一番上の姉の後援で、17歳の時、有名肖像画家・トーマス・ハドソンに師事し、9年後にローマに行って、ルネサンスの巨匠たちの絵を直接見ながら学んだ。30歳の時にロンドンに定着してからは、妹から支援を受け、ひたすら作業に打ち込んだ。優れた素描力と色彩、崇高な雰囲気を特徴にした彼の絵は、英国上流層を一気に魅了し、成功の道を走った。1768年に王立芸術院の初代院長に就任したのに続き、ジョージ3世から騎士爵位が与えられ、自ら上流社会の一員となった。

彼は上流階級の肖像画で名を得たが、神話や聖書の人物の子供時代を描くことにも長けていた。この絵の中の子どもも、旧約聖書に出てくる預言者・サミュエルだ。母親の長い祈りの末に生まれたサミュエルは、幼い頃、神に捧げられた。イスラエル最後の司祭であり判官になった彼は、生涯、名誉や権力を求めず、ただ国と民族のために献身した指導者だった。画家は、祈る幼いサミュエルの姿を通じて、指導者の清廉潔白と純粋性、知恵と服従を強調している。

もしかすれば、絵は難聴のあるレノルズが、夢をかなえるように一生世話をした姉たちの懇願を表現したものかも知れない。濃い暗雲の間から降り注ぐ光は、その祈りに対する応答であろうし、厳しい局面に直面するたびに画家も祈ったのだろう。大きな欲の代わりに「今日も無事に」と。