丸みのあるピンクのキャンバスに、ぽつぽつと穴があいている。錐や刀で刺して引いた跡が歴然としている。絵を台無しにして捨てようとしたか八つ当たりしたかのように見えるが、驚くことにこれが完成作だ。甚だしくは、オークションでは数百億ウォンで取り引きされる名画だ。とても気になる。画家はなぜキャンバスに穴をあけたのか。これが一体どうして芸術だと言うのか。
アルゼンチンで生まれ、イタリアで活躍したルーチョ・フォンタナは、このように穴を開けたり、刃物で切ったりした絵で国際的な名声を得た。彫刻家の父親のおかげで、早くから彫刻家としての訓練を受けたが、伝統芸術への反感は大きかった。「絵画と彫刻は過去のもの」と思っていたので、時代の変化に応じた新しい形式の美術を追求した。1947年に「空間主義」という美術運動を創始したフォンタナは、2年後からキャンバスの画面に穴を開け始めた。2次元の平面上に3次元の空間を作るためだった。「空間概念」と名付けられたこれらの連作は、伝統絵画に対する挑戦だった。
ルネサンス後、画家たちは対象を実際のように描くために取り組んできた。しかし、フォンタナは平面の上にイメージを描く代わりに、本物の空間を作ってしまった。これは絵画や彫刻、建築の領域までを含む新しい概念の芸術だった。筆の代わりに錐と刀を持って、キャンバスを毀損する物理的行為で作った新しい形式の絵画でもあった。
1960年代には四角の枠組みも破ってしまった。タマゴ・キャンバスの上に単色を塗った「神の終末」の連作を制作した この絵に描かれたピンクも、伝統絵画では用いられない色だ。絵のタイトルは、数世紀の間信仰のように守られてきた美術の規範と長年の慣習の終末を意味する。革新は古いものを破壊して生まれるという意味でもあった。
空間であれ思考であれ、渋滞すると窮屈になる。水なら腐る。このような時には突破口が必要だ。フォンタナが小さな錐一つで、枠に閉じこめられた美術の観念を解放したように、私たちも古い思考や習慣、あるいは息苦しい心を一気に解消してくれる各自のツールが必要だ。
美術評論家