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無観客と「家観」の間

Posted February. 29, 2020 07:51,   

Updated February. 29, 2020 07:51

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3千人を収容できるバスケットボールコートの観覧席はガランとしていた。物寂しいコートで監督の作戦指示が響きわたった。選手たちの荒い息は数十メートル外まで伝わった。先週末、仁川(インチョン)のドウォン体育館で行われた女子プロバスケットのKBスターズと新韓銀行の試合の様子だ。冷ややかなムードは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡散によって無観客で試合をしたため。平均2千人ほどの観客で一杯だったことを考えると、慣れない環境に置かれた選手たちの表情はぎこちなかった。国家代表のパク・ジス選手(KBスターズ)は、「苦しい時にファンの応援の声が聞こえると、アドレナリンが出る感じがする。走る原動力になるのに残念だ」と話した。

 

冬のスポーツの花であるバスケットボールとバレーボールは、新型コロナ拡散の直撃弾を受けた。男女バスケットボールとバレーボールのいずれも無観客で試合が行われている。シーズン開幕を控えたサッカーと野球も苦慮している。野球は1982年、プロスタート後初めてオープン戦を中止した。

今回の事態は、スポーツの存立基盤、選手(球団)とファンの関係を振り返える契機になる。延世(ヨンセ)大学バスケットボール部監督時代、名将として名を馳せたチェ・ヒアム高麗溶接棒副会長は、選手に名言を残したことで有名だ。「お前たちがボールペン1本でも作れるのか。運動選手が金を得て優遇されるのはファンがいるからだ。しっかりやれ」。ファンファーストの精神を強調したのだ。

 

一部の高額年俸のスポーツスターの傍若無人な態度やファンを無視するような行動は批判を受けてきた。試合後、子どもたちがハイファイブを求めても無視したり、サイン会などファンサービスのイベントを断る高圧的な選手もまだ多い。

「いる時にちゃんとしろ」というものだ。空っぽの客席を見つめる選手の中に、ファンへの懐かしさで「これから変わらなければ」と心に誓う選手もいることだろう。数日前、生涯初の無観客試合を行ったプロバスケットの現代モービスのユ・ジェハク監督は、「気分が乗らなかった。選手にこんな時ほど走る姿を見せなければならないと言った」と伝えた。

米デンバー大学の研究結果によると、メジャーリーグ球団の本拠地の都市の離婚率は、野球チームがない都市より28%低かったという。マイアミとフェニックスの離婚率は球団誘致の前と後を比較した時、30%まで減った。デンバー大学心理学科のハワード・マークマン教授は、「健全な結婚生活には楽しさと友愛が重要な価値だ。野球を楽しみ、対話する過程は愛を守る一つの方法」と分析した。スポーツ観戦が生活の質と幸福を高め、頭脳の開発と言語理解能力の向上に役立つという研究結果もある。

肯定的な効果が多いスポーツ観戦を競技場で楽しむ「直観」が難しいなら、家で試合を観戦する「家観」はどうだろうか。技術の発展でTV、PC、モバイル機器などを通じた観戦も、勝負の緊張を感じることができる。成均館(ソンギュングァン)大学スポーツ科学科のチャン・ウォンソク教授は、「ストリーミングで別のファンたちとリアルタイムでチャットするなど、家でも観戦の妙味を最大化することができる」とし、「無観客だが、球団もファンと意思疎通する努力が重要だ」と語った。米ミシガン大学のクァク・テヒ教授は、「無観客試合でも可能ならすべきだ。ただし、選手やスタッフの保護義務もある。ファンの見る権利同様、選手が安心してプレーできる環境も重要だ」と指摘した。

過去、朴賛浩(パク・チャンホ)、朴セリ、金妍兒(キム・ヨンア)などの活躍は、国家危機状況で疲弊した国民に希望のメッセージを伝えた。選手とファンが激励文やコメントを交わしてはどうか。目の前の現実はもどかしいが、ただ萎縮することはできない。一日も早く大切な日常が元に戻ることを。スポーツが力になるといい。


金鍾錫 kjs0123@donga.com