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17年前に南太平洋で見つかった「極限微生物」から水素エネルギーを作る

17年前に南太平洋で見つかった「極限微生物」から水素エネルギーを作る

Posted November. 29, 2019 07:31,   

Updated November. 29, 2019 14:52

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22日午後、釜山影島区(プサン・ヨンドグ)の韓国海洋科学技術院(海洋科学技術院)海洋生命工学研究センターの実験室では、17年前に南太平洋で見つかった微生物の「子孫」を培養する実験が盛んだった。「Themococcus Onnurineus NA1」と呼ばれる微生物が約1兆匹入っている円筒状の培養器を手で触ってみると熱かった。発見当時、80度以上の高温環境で生息していた微生物の生息環境をそのまま再現したのだ。

この微生物は、20分で世代が増えるほど繁殖が早いうえ、環境にやさしい燃料として注目される水素を生産する神秘的能力を持っている。遺伝子組み換えで17年間「進化」を繰り返した末、今では水素の生産能力を映画の中の「ハルク」並みに増やした。海洋科学技術院は、微生物を利用してバイオ水素を大量生産する実証実験を企業主導で進めている。海洋科学技術院のカン・ソンギュン海洋生命工学研究センター長は、「微生物を使った水素(バイオ水素)の生産技術は、明らかに世界的にリードしている」とし、「その始まりは17年前、海洋調査船を通じて発掘した深海微生物の発掘とそれを分離、培養して改良した基礎研究だったことから、生命工学者として誇りを感じている」と語った。

「生物の宝庫」の海は、さまざまな過酷な環境が存在し、それに適応した超能力に近い極限機能を備えた微生物でいっぱいだ。80度を超える高温でも生き残る微生物、有毒な硫黄を食べて消化する微生物、強力な酸性でも生存する微生物がそうだ。現在、海には最大で10億種の微生物が生息していると推定される。地球全体には約1兆種の微生物が生息すると推定されるが、人間はまだその0.06%に過ぎない600万種を把握している。

「Thermococcus Onnurineus」もその一つだ。この微生物は、海洋科学技術院の海洋調査船「オンヌリ号」の研究チームが2002年、南太平洋パプアニューギニアの西側の海中1650メートルの地点で発見した。熱湯の出る海底地形である深海熱水噴出孔で見つかったこの微生物(古細菌)は、80度以上の高温で生息しており、塩分濃度が高く、酸性の過酷な環境でも強靭な生存力を発揮する。韓国が分離、培養して学名を付けた最初の海洋極限微生物だ。

この微生物は、他の理由で注目を集め始めた。水素を生産する能力を持っていることが明らかになったのだ。水素は、エネルギーを作った後は水だけを排出する環境にやさしい燃料として注目されている。政府は今年初め、交通とエネルギー貯蔵分野を革新するための「水素経済ロードマップ」を発表した。水素経済への進入過程における最大の難題は、水素生産技術が効率的でないことだ。水を電気分解して水素を得る方法が研究されているが、まだ効率が低い。現在は、石油化学工程から出た副生水素を主に使っている。

一方、この微生物は、一酸化炭素やギ酸、澱粉などを与えれば水素を生産する。微生物のDNA全体(遺伝体)を分析した結果、186万個の塩基対を持っている。このうち5%が水素生産に関わる7つの酵素を作ることが明らかになった。他の不要な機能を減らして、ひたすら極限の条件で生存するための「超能力」に集中する微生物だ。研究チームは2010年、「ネイチャー」にこのような事実を紹介して世界から注目を集めた。水素を副生産物として出す微生物は、この微生物のほか、いくつかさらにあるが、この微生物は様々な物質を食べることができるうえ、代謝の過程で必ず水素を出すので効率が高く、「微生物工場」を実現できる世界で最も有力な候補となっている。

海洋科学技術院は、直ちにこの微生物の生物学的機能と水素の生産原理を明らかにし、その機能を強化する研究に着手した。また、効率的に水素を出す工程も開発した。カン・センター長は、「元々酸素が存在すれば生存できない嫌気性微生物だったが、地上での実験を経て、弱い酸素にさらされても生存できるようになった」とし、「生産性も大幅に良くなっており、2002年の元の菌の状態に比べて成長は140倍も速くなり、生産性は125倍向上した」と語った。

海洋科学技術院は、産業現場や発電所などから出る副生ガスを利用して水素を製造する工程について研究している。副生ガスには一酸化炭素が含まれており、国内で毎年1680万トン、世界的には4億トンが発生する。研究チームは、微生物をこの新しい「餌」に合わせて適応させた。すでに2016年、忠清南道唐津(チュンチョンナムド・タンジン)製鉄所で1トンに規模を拡大した培養器を用いて、副生ガスを利用する工程のテストに成功した。2017年からは、泰安(テアン)西部発電本部でキョンドンエンジニアリング主観で50トン規模の培養器を使う実証(デモ)プラントで実験を行っている。年間330トンの水素を生産できる。水素自動車1000〜2000台が1年間使う量だ。


ユン・シンヨン東亜サイエンス記者 ashilla@donga.com