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乗客立ち乗りのまま時速100キロ、広域バス乱暴運転の実態

乗客立ち乗りのまま時速100キロ、広域バス乱暴運転の実態

Posted March. 20, 2013 07:54,   

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12日の夜11時半。ソウル光化門(クァンファムン)と京畿道高陽市(キョンギド・コヤンシ)の一山(イルサン)新都市の間を運行する1000番広域バスの「疾走本能」が目覚める時刻だ。午後から降っている雨水で道路は濡れているが、運転手は気にも止めなかった。バスは10人あまりの客を乗せて、まっすぐ伸びているソウル西大門区(ソデムング)の水色(スセク)から高陽市中央路までの8キロを突っ走った。住宅街と商店街が混在していて歩行者通行量も多いこの区間の制限速度は60キロ。自動車専用道路でもない一般道路で1000番バスは85キロまで速度を出した。2011年、この水色路だけで速度違反のバスに5人が命を失った。

13日の午前零時半、ソウル永登浦(ヨンドゥンポ)郵便局から一山に向かう803番バスも、楊花(ヤンファ)大橋を通って江辺(カンビョン)北路に入ると、スピードを出し始めた。制限速度80キロはとっくに超えている。制限速度90キロの自由路に入ると、時速92、93キロ…。記者が手に持っていたナビゲーションには「97キロ」の数字が映し出していたし、セダンを軽く追い越した。自由路からソウル外郭循環高速道路に入る際、バスは急激に減速した。ウィンカーも出さないまま車線を変えようとして、横を走っていた一般車両とぶつかりそうだった。立ち乗りの乗客3人が危うく揺れた。座っていた乗客たちも片方に傾いた。運転手は神経質になってクラクションを鳴らし続けては、再び速度を時速90キロまで上げた。

●制限速度の20キロ超過は当たり前

東亜(トンア)日報の取材チームと交通安全公団は、首都圏の運輸会社の中でここ3ヵ月の間、スピード違反回数が最上位の運輸会社2社の広域バス7台を2月15日から3月12日にかけて、20回あまりを繰り返して乗りながら反則運転の実態を点検した。搭乗時間は午後11時〜午後1時の間だった。7台はいずれも、一山、水原(スウォン)、坡州(パジュ)、仁川(インチョン)などからソウルを往復する広域・座席バスで、利用客が多いバスだった。

また、昨年9月から先月14日にかけての約5ヵ月にわたるデジタル運航記録計の記録を分析した。同記録計は、バスの運行速度やブレーク、加速ペダルの使用、運転時間など、運転手の運行情報を自動的に記録する機器だ。

取材チームが直接乗ってみたバスは、いずれも数十人の乗客を乗せて道路を突っ走る時限爆弾も同然だった。水色路や盤浦(パンポ)路などマンションと学校が密集していて、流動人口の多い住居地域でも時速80キロを越えることがあったし、ソウル外郭循環高速道路の自由路・義王(ウィワン)ICなど自動車専用道路ではジグザグに車線を変えながらスピードを出した。

永登浦(ヨンドゥンポ)〜坡州間を往復する1500番広域バスは、制限速度が60キロの京畿道高陽市の大化(テファ)駅付近で80キロを超えながら飛ばしていた。水原と江南(カンナム)・楊才(ヤンジェ)間を運行する3007番、7000番、7001番の広域バスも、都心を抜け出すや否や、恐ろしい勢いでスピードを出した。

ソウル外郭循環高速道路の自由路ICと果川(クァチョン)〜峰潭(ポンダム)高速道路の義王ICなど自動車専用道路の他にも、制限速度60キロの都心でもバスは常習的に飛ばしていた。3007番バスに乗っていたイ某さん(41)は、「バスの乱暴運転は酷すぎる。まるで凶器で脅されるような恐怖感に怒りを感じて運輸会社に電話して文句を言いたいと思ったくらいだ」と話した。

デジタル運行記録計を分析した結果、これらの路線を運行するA、B社のバスは、10キロごとに平均12.6回をスピードオバーをしていることが分かった。

●時速10キロの衝突でもゾッとするのに

取材チームは、バスが急ブレーキをかけるときに乗客が受ける衝撃を調べるため、7日、慶尚北道尚州市(キョンサンブクと・サンジュシ)の交通安全公団・交通安全教育センターで直接実験を行った。時速はわずか10キロ。

同公団教育開発処のハ・スンウ教授は、「シートベルトをしてグリップをしっかりつかんでください」と注意を呼びかけた。徐行中だったが、急ブレーキがかかる瞬間、座席に座っていた記者は、前の座席に頭をぶつけるくらい強力な衝撃が伝わった。ハ教授は、「時速100キロで衝突すると、乗客が重症を追う可能性は99.95だ。時速48キロで衝突したときの9倍だ」と説明した。

昨年11月、京畿道安山市八谷洞(キョンギド・アンサンシ・パルゴクドン)の水仁(スイン)産業道路では、キム某氏(50)が運転していた707番の市内座席バスが転覆した。乗客40人あまりを乗せて制限速度を30キロもスピードオーバーした時速110キロで運転していためだ。この事故で1人が死亡し、23人が重軽傷を負った。カーブで重心を失ったのが原因だった。このようにバスは、一度の事故で2人以上が死んだり6人以上が重傷を負う「重大交通事故」を、毎年40件あまりずつ起こしている。

バスの交通事故は全部で毎年8000件あまりが起きている。毎年3万件あまりが発生するタクシーの交通事故件数の3分の1に過ぎないが、死亡者数では殆ど変わりない。2010年のバスの交通事故は8300件あまり。だが、タクシーは同年、その3倍を越える2万8000件だったが、事故による死亡者数はバスが多かった。

●命を担保に暴走する高速道路運行

立ち乗りの乗客が多いのも問題だ。一般車両が時速100キロで走って衝突すると、搭乗者は13階建てビルの高さ(39.3メートル)から素裸で飛び降りるのと同じ衝撃を受ける。立ち乗りの乗客が受ける衝撃は想像もできないほど大きい。バスが25キロで走行して横転したとき、立ち乗り客は、シートベルトを締めている乗客に比べて重傷を負う可能性が18倍高くなるという調査結果もある。

このような危険性のため、道路交通法上、自動車専用道路を運行する広域バスが定員を超えている場合、運転手に500万ウォン以下の過料を課すよう規定しているが、取材チームが通勤時間帯の広域バスの実態を取材したところによると、大半のバスが立ち乗り客を乗せたまま高速道路など自動車専用道路を時速90を越えるスピードで乱暴運転をしていた。こうした問題点は、10年近く指摘され続けているが、「通勤のためには仕方ない」という理由で改善されずにいる。

飛ばすバスは、歩行者にも大きな脅威となっている。2011年、バスに轢かれて死んだ歩行者は117人。会社員のチョン某氏は「中央車線のバス停に停まっているとき、広域バスが猛烈なスピードで横を通り過ぎるはゾッとする」とし、「バス停を襲うような大型事故でも起こらないと取り締まらないつもりなのか」と声を荒げた。

バス運転手たちは、「通気時間帯にはスピードオーバーは避けられない」と訴えている。「スピードを出してくれ」と催促する乗客が多く、配車時間に間に合わせるためだという。1000番バスの運転手A氏は、「似たような路線を運行する他社のバスと激しく競争しているため、『うちのバスだけ制限速度を守っているわけにはいかない』という焦りがある」と打ち明けた。



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