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ソウル大学の「テーマ探求」教育、自助努力できる子供を育てる

ソウル大学の「テーマ探求」教育、自助努力できる子供を育てる

Posted April. 22, 2010 02:57,   

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小学校教師の李ジヨンさん(33=ソウル江東区千戸洞)は、5歳の息子、ヨジュン君が通う幼稚園を探すのに、相当苦労した。施設も優れている上、先生もすばらしかったが、先行学習に重点をおいて子供を教えるところがほとんどだったからだ。

そんな時、夫の通っている国民体育振興公団の職場保育施設について耳にした。安価な利用料やエコ施設も気に入ったが、ソウル大学・生活科学学部・消費者児童学科の委託を受けて運営される教育プログラムに、もっとも魅力を感じた。

ほかの保育所のように、ハングルや算数、英語の先行学習を行っておらず、自主的態度や創意的考え方を身につけさせる「テーマ探求表現活動」は、李さんが探し求めていた教育方法だった。ヨジュン君は、この保育所に通い始めてから、自ら計画を立てて活動を行うことが増え、やらせなくても自分の世話は自分でやる子供となった。

●大学のプログラムとは最高の相性

ソウル松坡区芳荑洞(ソンパグ・バンイドン)のオリンピック公園・オリンピックプール2階にある国民体育振興公団の保育所は03年から、ソウル大学・消費者児童学部が委託を受けて運営している。現在、消費者児童学部が委託・運営している保育所は、ソウル大学やソウル高等裁判所、ハイニックス半導体など、すべて職場内保育施設である。

「テーマの探求表現活動」プログラムを開発した李順炯(イ・スンヒョン)ソウル大学消費者児童学部教授は、職場内保育施設は、このようなプログラムを適用するのに、優れた環境を備えていると主張している。

李教授は、「職場内保育施設は、会社と労組による全面的支援を受けることができ、哲学が盛り込まれた教育を行いやすい」とし、「特に、教師らも負担なく勤めることができ、子供の教育に専念することができる」と語った。

また、李教授は、「保護者らと同じ会社に勤めているので、持続的なコミュニケーションのネットワークがあり、多様かつ幅広い交流が可能である」とした上で、「そこを通して、保育施設を巡る意見や批判を聞き、足りないところを改めることができ、その恩恵は子供らに速やかにフィードバックされる」と主張した。

国民体育振興公団の保育所は、院長や5人の保育士のうち2人が、消費者児童学部の博士課程を修了したり、また在学中の大学院生である。院長は、修士課程を卒業し、数年間現場でのキャリアを積まなければならない。学位課程で研究中の学生は、教師として働くことができる。学校で学んだことを、直接子供らと接しながら実習し、現場での経験を蓄積できる機会となるので、志望者も多い。

現在、幼稚園には職員の子供48人と地域住民の子供19人が通っている。「お月様組(2歳以下)」や「お天道様組(3歳)」、「お星様組(4歳)」、「天の川組(5歳)」にそれぞれ10‾20人の子供が通っている。保育士は、一番下の子供らの通うお月様組に2人、残りの組には1人ずつであり、授業時間は午前8時から午後7時までだ。

同公団は08年に保育所を移転する時も、ソウル大学・消費者児童学部から、いろいろなサポートを受けた。当時、保育室4ヵ所、視聴覚室1ヵ所、特別活動質1ヵ所、屋内外の遊び場それぞれ2ヵ所の間取りやデザインを全て、消費者児童学部の研究チームと協議して決定した。

06年、ソウル大学消費者児童学部の博士課程を修了し、2年間公団の保育施設の経営を引き受けているチョン・ヒョンシム院長(33、女)は、「教師ルームを真ん中におき、両側に保育室を配置したことや、事務所の照明、換気扇、防犯カメラの取り付け場所、トイレの便器のサイズまで、全ては研究チームの助言を基に決定した」と話した。有害物質を排除し、環境にやさしい建物にするため、ボンドなどの接着剤を使わなかったのも、研究チームのアイデアだった。

●遊びを通して世の中を探求

国民体育振興公団が、さまざまな委託業者の志願書に対して評価を行った末、最終的にソウル大学・消費者児童学部と手を組んだのは、ソウル大学が示したテーマ探求表現活動のためだった。テーマ探求表現活動とは、教師と子供が学習するテーマを一緒に決め、これを中心にさまざまな活動を行う教育法である。消費者児童学部が、イタリアの「レッジョ・エミリア」や米国の「プロジェクトへのアクセス法」を融合させ、韓国の現状に即した教育法として見直したものである。

この活動の中核は、子供らが自らテーマを決め、勉強のやり方やその過程も同様に主導的に計画することである。保育士は、子供らに対し、何を勉強したいのかを尋ね、一つのテーマを導き出すことになる。そのテーマに関連した言葉や活動を引き出し、それにあわせて学習計画を組むことになる。

「『ウサギ』と言われれば何を思い浮かべるか」と尋ね、「耳」や「腕」、「足」という答えが出れば、これらを「ウサギの体」という一つの小テーマにまとめる。「ウサギと亀」、「不思議な国のアリス」という答えが出れば、「ウサギ物語」という小テーマにまとめ、演劇を組む。子供らは自分が決めたテーマで作品や演劇を作り、家族らに披露する。

天の川組の子供らのテーマ探求教育授業をのぞいてみた。新学期の最初のテーマは、「天の川組の友達」、小テーマは「天の川組の教室」、「友達の名前」、「友達との思い出」、「友達の上手なこと」、「友達らの表情」だった。教室の壁にはこのようなさまざまなテーマが放射状の図表で描かれている。子供らは、リサイクル用品で子供らの顔を作った。一般幼稚園の美術授業は、保育士が材料や出来上がりの枠を示し、子供らはそれに合わせて似たような作品を作り出すのに、ここでは、先生らは材料を提供するだけで、子供らは自由に材料や道具を手にし、本人だけの作品を作った。

チョン・ヒョンシム院長は、「子供らは初めは、このやり方の授業に適応できず、『できそうもない』などと大変そうだが、すぐ克服することになる」とし、「子供らが自ら考え、決定し、構想できる力を育成するのが、この授業の最大のメリットだ」と語った。