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[オピニオン]顔のない寄付

Posted December. 30, 2009 08:33,   

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経済学では、人間は自分の利益を極大化する利己的な存在だと考える。しかし、その一方で、自分のものを喜んで差し出す寄付行為が続いている。人間社会で利己と利他が交差する矛盾現象について、『徳の起源—他人をおもいやる遺伝子』の著者マット・リドレーは、「蟻や蜂などに見られる互恵主義と協同性は、自分の生存に役立つためであり、人間も同じだ」と説明する。

◆ノーベル経済学賞受賞者のアマルティア・センの説明はさらに単純だ。「人間は、他人が喜んでいる姿を見ればうれしくなり、他人が苦しんでいる姿を見れば悲しくなる。同情行為は、行為者自身の効用を追求するうえで役立つ」。最近の脳研究の結果は、このような主張を後押ししている。寄付や善行をすれば、脳の中に補償作用を担う領域が活性化し、気分よくさせるということだ。利他的行動は、高度な道徳的判断を要求する領域でもあるが、人間本能とも結びついているということだ。

◆10年間、クリスマスの頃になると、全州市完山区若松洞(チョンジュシ・ワンサング・ノソンドン)の周辺にお金を置く匿名の寄付者が今年も現れた。今年、彼が寄付した金額は、この9年間の金額(8100万ウォン)に匹敵する約8026万ウォンの巨額だった。紙の箱の中に小銭が一杯入ったブタの貯金箱が一緒に入っていることから、自分が出せるものはすべて寄付したと推測される。このように善行をしても身分を隠そうとする理由は分からないが、この寄付者は、脳の中で喜びのエンドルフィンがたくさん出ているのだろう。

◆中世時代の最高のユダヤ人学者とされるモーゼス・マイモニデスは、「寄付の8段階」を記録で残した。それによると、最も価値のある寄付は、「相手が自立できるよう助けることで、他人に頼らなくてもいいようにすること」であり、2番目に価値のある寄付は、「寄付する人と受け取る人が互いに正体が分からないようにすること」だ。2番目の寄付は、助けを受ける人の自尊心を強調し、助けを与える人に謙遜の姿勢を求めたものだ。今年他界した金壽煥(キム・スファン)枢機卿の遺言「ありがとうございます。愛し合ってください」という言葉が、世の中に愛のウイルスを広めたように、この「顔のない天使」の寄付ウイルスも広く広まることを願う。

鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員shchung@donga.com