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■ 人権委による勧告、なぜ効き目が無いのか

■ 人権委による勧告、なぜ効き目が無いのか

Posted September. 07, 2009 08:27,   

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国家人権委員会(人権委)は02年の発足以来、韓国内の人権状況の改善にそれなりに多くの貢献を行ってきた。しかし、勧告の受け入れ率が下がり、人権委の運営方式への批判が高まる理由は大きく2つに分けることができる。

まず、人権委が人権という普遍的な価値の当為性にだけ傾いたため、現実を考慮せず、理想的な勧告を多く発しているという指摘がある。事細かな事案まで「姑」のように勧告を行い、相手は承服しない現象が多いという。

また、政権交替を受けての雰囲気の変化だ。盧武鉉 (ノ・ムヒョン)政府時代は人権委の肩を持ち、意を共にする人物らが主導権を握っていたため、勧告に権威があった。政府の各機関は不満があっても、政権の機嫌を取るため、やむを得ず受け入れた事案も少なくない。しかし、李明博(イ・ミョンバク)政府発足以後、人権委の立場は弱まった。政府機関や各企業などが「実権を失った」人権委による勧告を拒否する事例が増えている。

●非現実的な勧告のために背かれる

人権委は昨年10月、大韓(テハン)航空が機内乗務員の公開採用の条件に、男性が入っていないのは男性への性差別だとして、採用慣行の改善を勧告した。しかし、大韓航空は現在まで、勧告を受け入れておらず、従来の採用規定を維持している。同社の関係者は、「社内のほかの職種の男子社員を対象に、社内公募を通じて機内乗組員となる機会を与えていると釈明したにもかかわらず、人権委は勧告を強行した」とし、「機内乗務員として女性を採用する航空会社の人材運営上の特性をきちんと考慮しなかったようで、残念だ」と語った。

人権委の前向きな役割を認める政府機関や各企業も、人権委の過度な介入や硬直した態度だけは変えなければならないと指摘している。ソウル市は先月17日、「ホームレスなど、低所得の脆弱階層のための名義盗用被害を防ぐための予防対策」をまとめた。名義盗用による被害を予防するため、ホームレスやスラム街入居者などの名義の金融貸出や携帯電話の開設、事業者登録、車両登録などの主要信用サービスを制限するという内容の対策だった。これに対して人権委は、「ホームレスへの社会的な差別を深める余地がある」と、人権侵害の意見を出すことを決めたというニュースが伝わった先月27日、ソウル市は即座で遺憾を示した。ソウル市は異例なことに、「人権委の判断を尊重する」としながらも、「関連対策は引き続き実施する」と明らかにした。

外部の指摘に対して、人権委のある常任委員は、「『人権委は現実を知らない』という外部からの批判は十分熟知しているが、さまざまな制度や政策を人権最優先の目線でアプローチする原則を捨てるわけには行かないではないか」と反問した。また、「いざ、人権委が釈明のチャンスを与えれば、消極的な態度を通し、勧告が出された後に不満を持ち出す機関も少なくない」と語った。

●「張子の虎」となったのか

人権委による人権政策関連勧告の受け入れ率は06年の80%から、盧武鉉政府の最後の年だった07年は59%にまで落ち込んだ。人権委と意を共にした盧武鉉政府の「レイムダック」が、人権委による勧告の受け入れ率にも反映されたという主張が説得力を得るくだりでもある。

宗教的な理由から銃を取ることを拒否する人々のための代替服務制の導入は、盧武鉉政府時代、人権委の勧告が受け入れられる方向に傾いたものの、新政府の発足と共に反対に回った代表的な事例だ。07年9月、代替服務制の導入方針を固めた国防部は、1年あまり経った昨年12月、制度の導入を白紙化することを決めた。国防部の関係者は、「盧武鉉政府時代は、人権委の勧告を無視すれば、国政方針を逆らうことと認識され、公務員らが不利益をこうむらないため、消極的だった」と語った。

西江(ソガン)大学の林智奉(イム・ジボン)教授(法学)は、「新政府の発足後、人権委の組織が縮小された上、委員長交替などの過程を経て、政府の各機構もかつてのように人権委を機嫌をうかがう現象が減ってしまった」と説明した。

●勧告委の普遍・妥当性を引き上げるべき

人権委が我が社会の主要公益やほかの権利にまでくまなく目を配る努力が足りないという指摘は依然変わっていない。昨年6月、人権委は、痴呆症老人やその家族らの同意を得て、道に迷う可能性の高い痴呆老人の服に、取り付けや取り外しのできるタグをつける保健福祉家族部(福祉部)の政策に対して、「個人情報の流出の可能性や犯罪への悪用可能性」を掲げて、人権侵害の意見を出した。

福祉部の関係者は、「名前や連絡先などの個人情報は全てコード化したため、タグには現れないし、行方不明の老人専門機関などから管理するため、人権侵害の可能性は非常に低い」とし、「人権侵害の可能性よりは、制度の実施によって手にする利益の方が一際大きいのではないか」と切り返した。福祉部は現在、該当事業を実施している。

崇實(スンシル)大学の姜京根(カン・ギョングン)教授(法学)は、「盧武鉉政府時代に人権委の勧告が持つ力は、勧告そのものの妥当性よりは、政権のコードに頼った側面が少なくなかった」とし、「より多くの国民が共感できる普遍性のある勧告を行うための努力が必要だ」と話した。



passion@donga.com