非正規雇用の期間を2年に制限した現行法が1日から施行されたことで、雇用期間2年を満たした非正規雇用労働者が職場を去りはじめた。非正規雇用労働者が7月の1ヵ月間だけでも2万〜3万人、今後1年間で40万〜70万人が失業する「解雇大乱」が目前に迫っている。非正規雇用を正規雇用に転換する余力のない中小企業は、熟練の人材を手放し再び人を採用するため、さらなるコストを払わなければならず、労働の質も落ちるほかない。
ハンナラ党が1日、国会環境労働委に法案を上程し、「野党6人会談」を提案したが、結果を楽観できない状況だ。政界は責任転嫁している。口を開けば、国民のためだと騒ぐ政党と政治家は、社会的弱者が大半である550万の非正規雇用労働者を失業という苦痛に追い込んでいるのだ。
非正規雇用労働者の失業大乱は、06年11月の非正規雇用法制定当時から予想されたことだ。民主党の前身であるヨルリン・ウリ党は、「2年雇用の直前に解雇すれば、生産性の低下と労務管理費用の増加を招くため、雇用期間2年になる前に解雇する恐れは少ない」とし、企業と経済の現実を無視して立法を推進した。その後、非正規雇用が増え、法を改正しない限り、解雇大乱が避けられなくなったにもかかわらず、慮武鉉(ノ・ムヒョン)政権とヨルリン・ウリ党は、何の措置も取らなかった。李明博(イ・ミョンバク)政権も政権獲得後、労働界の顔色を伺い、今年4月になって法改正案を国会に提出するなど、十分な交渉時間を確保できなかったという点で、政府と与野党いずれにも責任がある。
ところが、非正規雇用の最大の責任は、民主党にある。非正規雇用法は「非正規雇用解雇法」と呼ばれるほど、非現実的な法だった。自由先進党の李会昌(イ・フェチャン)総裁が指摘するように、慮武鉉政権と当時の与党が「ごり押しで作った法」だ。民主党は、2年前に大きな過ちを犯しながらも、過ちを改める努力をしていない。
秋美愛(チュ・ミエ)国会環境労働委員長(民主党)は、労働界の反対を理由に、改正案の常任委上程を拒否し、与野党の交渉そのものを困難にした。秋委員長の無責任な独断に対し、民主党内でも「個人の政治的行動」という批判まで出ている。秋委員長は先月30日、ハンナラ党が国会議長に非正規雇用法改正案の職権上程を要請するなら、「96年に国民に対し労働法を強行採決し、植物政権になってしまった金泳三(キム・ヨンサム)政権が参考になるだろう」と語った。非正規雇用法改正を最後まで妨げ、強行採決を誘導し、現政権を植物政権にする考えということか。
秋委員長が言及した96年の労働法の事態も、振り返る必要がある。韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟後、世界レベルに合わせ、整理解雇などを認める労働関連法改正が避けられなかった。当時、野党と労働界の激しい反対で新韓国党(ハンナラ党の前身)は、同年12月、国会本会議で法案を与党単独で処理した。労働法の波紋が続き、企業の構造調整が先送りとなり、海外からの信任度が急落したことも、97年の通貨危機が原因という分析が支配的だ。金大中(キム・デジュン)元大統領の通貨危機一部責任論が提起されたのもこのためだ。一般市民と中間層のための政党という民主党が、非正規雇用法改正に協力しないことは、自らの党のアイデンティティに逆行する行為である。非正規雇用法が改正されなければ、最大の被害を受けるのは、まさに民主党の支持基盤であるという一般市民と中間層だ。大企業よりも中小企業の味方という民主党が、非正規雇用法改正引き延しによる中小企業の被害に知らん振りをするなら、自己矛盾である。秋委員長は二大労総の反対を理由に、法案上程を拒否しているが、数十万人が所属するニ大労総の機嫌取りのため、数百万の非正規雇用労働者を犠牲にしているのだ。
与野党はただちに、非正規労働者の大量解雇と失業事態を最小化するために、非正規雇用法の施行を猶予し、抜本的な対策を講じなければならない。非正規雇用の事態は、87年以降の労組の強硬闘争、政治闘争で硬直した労働市場に根がある。正規雇用と解雇が難しくなった企業は、非正規雇用を拡大した。正規雇用の労働市場に対する改革に背を向けては、非正規雇用問題の抜本的な解決策を見出すことはできない。
90年代以降、欧州各国は労働市場に対し、柔軟な措置を取り、非正規雇用に対する規制緩和を推進している。英国、ドイツ、イタリア、オランダなどの多くの欧州諸国が、非正規雇用労働者の雇用期間に制限がない。OECD加盟国のうち、非正規雇用の割合が5%未満で、最も低い国は米国だ。米国では、「すべての労働者が非正規雇用」と言えるためだ。
非正規雇用労働者が望むことは、非正規の雇用でも維持しながら、労働条件を改善することだ。非正規雇用の期限を廃止し、当事者の自律的な契約を重視し、延長契約を可能にさせてこそ、労働市場の柔軟性を高め、非正規雇用の問題を抜本的に解決することができる。