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[オピニオン]自由になれる勇気

Posted April. 05, 2021 08:42,   

Updated April. 05, 2021 08:42

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「人にはある程度の狂気が必要です」(映画「その男ゾルバ」)

映画「その男ゾルバ」(1964年)で、模範生のようにまじめな作家・バジル(アラン・ベイツ)に対して、ふてぶてしくて即興的だが、人生の知恵を備えた中年男性ジョルバ(アンソニー・クイン)が口にする言葉だ。理性的に考えて行動するバジルに、ジョルバは自分を縛り付ける束縛を果敢に脱ぎ捨てろと、そうしてこそ自由になれると言う。主に本を通じて人生に接したバジルは、ジョルバを通じて真なる人生について悟るようになる。

今もこの映画を考えると、海辺で2人の男が踊るラストシーンが浮かび上がり、彼らの自由と歓喜が生々しく感じられる。自由とは、個人の生活においても人類の歴史の発展においても非常に大切な価値と言える。近代民主主義の中核は自由であり、この自由は理性と知性によって担保されると、多くの哲学者は主張してきた。しかし「その男ゾルバ」では、感性が最大化した「狂気」こそ人を自由にするというメッセージを投げかける。狂気とは、自分を縛り付ける慣習や道徳、社会的制度を破ることができる勇気のことではないかと思う。また時には金と権力の前で適当に「傲慢」でいられる生き方だと考えられている。

原作者のカザンザキスは、人生全体でも自由という価値を重視したギリシャの代表作家だ。クレタ島にある彼の墓碑にも刻まれている。「私は何も望んでいない。私は何も怖くない。私は自由だ」。

昨今の時代は本当にもどかしい。何よりもコロナ事態による「大封鎖時代」(the greatlockdown)であり、やむなく移動、集まり、経済活動の制約などで個人の自由が拘束されるからなおさらそうだ。制約と拘束なく生きる日常がどれほど大切なのかを改めて悟る今、カザンザキスの自由が、ジョルバの狂気が懐かしい。