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潘基文の情熱

Posted February. 03, 2017 08:51,   

Updated February. 03, 2017 08:51

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英国の政治思想家であるジョン・ロックは『統治二論』で国家機能を立法権、行政権、連合権に分けた。国家三権の中、司法権ではなく連合権が置かれている点が珍しい。連合権は戦争と同盟、即ち外交に関する権限である。外交の重要性からの分類であるに違いない。フランスのリシュリュー、オーストリアのメッテルニヒ、プロイセンのビスマルクはそれぞれ時代最高の政治家であり最高の外交官である。

◆韓国の大統領は最高の外交官でなければならない。だからといって最高の外交官が大統領になるわけでもない。ヘンリー・キッシンジャー氏は永遠の外交官と呼ばれる。キッシンジャー氏が米国の政治に踏み込んだことはなかったが、政治もうまくできたとは思えない。キッシンジャー氏は中国の鬼谷子の本を愛読したという。鬼谷子の弟子であった蘇秦と張儀は、中国の戦国時代に合従連衡の変転する外交を繰り広げた。蘇秦と張儀も統治者に仕える外交の策士にすぎなかった。

◆前国連事務総長の潘基文(パン・ギムン)氏は典型的な外交官だ。外務部専門職員試験に合格した後、外交部でのキャリアを積み外交部長官にまで上り詰めては国連事務総長になった。韓国の場合、外交部長官になるのは外交官出身が多い。しかし、欧米の先進国では大統領や総理に次ぐナンバー2の政治家がほとんどだ。政治のためには外交が必須だと思われているから。しかし、外交に長けているからといって必ずしも政治がうまいわけではない。

◆潘氏は次期大統領選挙に不出馬宣言をした翌日、「政治は決して排他的になってはならず、すべての国民に開かれるべき」と語った。韓国の外交官出身として初めて大統領選挙に挑んだものの志半ばで倒れた人の嘆きである。確かにそうだ。しかし、ドイツの社会学者であるマックス・ヴェーバーに言わせると「政治とは情熱(Leidenschaft)をもって堅い板に向かって、強く少しずつ穴をあけるような作業」である。情熱という言葉には苦痛(Leiden)という意味が含まれている。潘氏は苦しまず大統領という玉の輿に乗ってみようとしたものの、嵐が吹き荒れそうになるやいなや途中下車したのではないだろうか。黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行しかと見届けてほしい。