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[オピニオン]液体状態としての真実

Posted October. 29, 2015 07:19,   

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国会議員出身の康容碩(カン・ヨンソク)弁護士と不倫の噂が立っていた有名ブロガー「トドママ」が、自分の実名(キム・ミナ)と顔を公開した。氏は女性誌とのインタビューで、「(康容碩は)男としては、容姿からして自分の好みではない」という言葉で、不倫説を否認した。彼女は昨年、香港のとあるホテルのプールで、自分が康氏を撮った写真が公開されると、「でっち上げだ」とうそをついたことがある。今度は、「それぞれ異なる理由で香港に行ったが、偶然出会った」と話した。「偶然」という釈明より、芸能人顔負けの氏の容姿の方にさらに注目が集まったのは当然だ。

◆氏は、人々が自分の言葉を簡単に信じてくれると思って、インタビュー応じたわけではないだろう。キム氏は、「人々は私が隠れていると思っているが、隠れていること自体が不倫を認めるような気がしたので、『違う』という言葉をぜひ言いたかった」と話した。「違う」という否定の言葉や、それが受け入れられるだろうという期待からではなく、これ以上逃げも隠れもしないという。そうすることで、二人が不倫しているため、女の方は隠れていたと思っていた人たちの認識に亀裂を加えることが目的だ。

◆真実は、よく固体かのように思われがちだが、むしろ液体に近い。多くの真実は、人々が共有する認識に過ぎない。キム氏が沈黙し、隠れていたなら、不倫は真実として固まっていく。キム氏の戦略は、このような固体化の過程に介入して、それを再び液体状態に戻すことだった。人々が自分の言葉を信じても、信じなくても、「直接見ていない限り、不倫があったかどうか、わかるはずがない」という流動的状況にしておけば、それこそ成功したことになる。

◆不倫は内密なことであり、それを犯罪と断定し、国が介入してその証拠を探し出さない限り、不倫を摘発するのは難しい。姦通罪がもはや処罰対象でなくなった社会で、多くの不倫は、心証はあるが物証はない。言い換えれば不倫かどうかを確定できない状態として残ることになる。夫との離婚訴訟中のキム氏の自己公開は、堂々としたものでも、ずうずうしいものでもなく、姦通罪廃止以降の状況を周到綿密に計算したものだ。

宋平仁(ソン・ピョンイン)論説委員 pisong@donga.com