最近、日韓関係にかける韓国国民の期待と要求は歴史教科書の歪曲問題を通り越して、民族と国家の自尊心と名分とを求める問題に広がりつつある。一方、昨年の国家国政監査当時、与野党の議員が駐日韓国大使館の歴史教科書問題への対応における失態を非難したことなどを振り返って見ると、韓国政府は日本の歴史教科書の歪曲に適切な対応をしてこなかった嫌いがある。政府は「国益を考慮した慎重な対応」を訴えているが国民の不安と怒りは依然解消されない。
日本の小泉純一郎首相が金大中大統領との電話会談で歴史教科書の歪曲問題に真摯な態度を見せたのは、「21世紀の新しい日韓パートナシップ」に傷をつけてはならないという首相としての判断があったからかもしれない。
しかし、これまで日本天皇や首相らが「痛切な反省と心からの謝罪」を発表した直後、自分たちの過ちを揉み消し独島(トクト、日本名・竹島)の領有権を主張する右翼政治家の妄言が相次いだことを思い返せばこれまた外交レトリックに過ぎない可能性も高い。
田中真紀子外相は、記者会見で歴史を歪曲する人たちを批判した。彼女はこれまで交流した韓国外交官の成熟した人となりを誉めたり、新大久保駅のホームで酔客を助けようと命を落とした李秀賢(イ・スヒョン)氏の家族との逸話も紹介しつつ、自らの立場を説明した。しかし、田中外相は当初、この問題を早急に是正するとは述べておらず、「時間が必要」と注文をつけた。これは「世代の問題」であり、「日本に限らず韓国と中国も然り」とも言った。
田中外相は最近「日韓の友好関係が悪化しないよう早期解決したい」との意を明らかにした。しかし、これまでの経験からは彼女の発言に対して不信感を拭い切れない。田中外相は、歴史教科書問題の影響により日韓交流事業が次々と取り消されていくという指摘に「そのようなことが起こらないよう、長い時間をかけず軟着陸させるよう努力する」と言った。彼女の発言は韓国国民の激昂した感情をなだめるのが先であるという判断からかもしれない。しかし、早急に具体的な方策を打ち出さない限り、レトリックの域を大きく出るものとは言いにくい。
自民党は、正統保守を志向する右翼傾向の人物が党3役を担っている。歴代のどの政権よりも復古的かつ国粋主義に傾倒するだろう。今後、日本内閣の対内外政策が国民の人気を意識した展開となる場合、取り返しのつかない事態を引き起こし、韓国の対日外交も試練に立たされるだろう。
日本に求められる真の指導者は、正しい歴史認識と国際的なバランス感覚の持ち主である。田中外相が心より隣国の国民が負った心の傷を癒そうとするならば、具体的な方策を今にでもすぐ打ち出すべきだ。外交上の修辞ではなく歴史的な過ちと犯罪行為について心から反省し是正した時、はじめて真の善隣友好関係は作られるからである。
<ユ・ビョンヨン 韓国精神文化研究院教授、韓国政治>