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心の窓の星になった詩人

Posted October. 29, 2018 07:41,   

Updated October. 29, 2018 07:41

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ここからは誰も同行できない/読んでいた本を閉じ、メガネも電話も/クレジットカードも紙一枚持って行けない/数十億光年のはてしなく遠い旅/重い体では行くことができず/心一つ軽く体は置いて発たなければならない/天体の星、星の中の最も小さな星に向かって/運んで見て回って遠くに置いてきた/隣りの柿の木の枝の先に/いつもぐるぐる回る風になって/雪の度に芽生える早春の新芽になって/なつかしいものの胸を濡らして/その窓に映る星になることを――洪允淑(ホン・ユンスク)、「ここからは」

詩人の故・洪允淑先生の生涯最後の詩集「寂しさのために」にある詩だ。3年前の深まる秋、先生は神に永遠に抱かれた。司祭になる私に、先生は時には姉のように愛をくださり、私の人生で重要なことがある度にメンターになってくださった方だ。

いつも穏やかな笑顔で他人に気を配る先生は、一寸も乱れることなく実直で端正な方だった。徹底した自己省察で虚勢を許さなかった先生が見るこの世の中は、徹底して「他郷」だった。他郷で味わう深い悲哀と悲壮は自己愛から出てくる感想ではなく、不条理な世の中に隠された「真理の光と存在の実状」に向かう「運命的な渇望」だった。

先生は「詩は私の生を貫く一発の弾丸」と言った。「その弾丸は、さらに深く、さらに内に、さらに熱く私の生を貫き、傷を残し、その傷痕は恍惚とした傷痕だった」と告白する。先生の生涯は、戦争の残酷さはもとより対立と混乱で綴られた。そのため先生の歴史意識は、「どのように品位ある一人の人間として自尊心を持って生きることができるだろうか」に向き合った。

いま先生は、激しく凄まじく自己の内面と歴史の中で絶叫した声を止め、あの世とこの世の境界、他郷と故郷の境界で低い声で遠く懐かしい歌を歌う。先生は風になり、新芽になり、星になる。寂しい野原、最後の日差しのように超然とした詩人の声がこの上なくなつかしい秋だ。