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大衆化傾向で…富裕層たちは「より高価な製品で差別化」

大衆化傾向で…富裕層たちは「より高価な製品で差別化」

Posted November. 30, 2019 09:19,   

Updated November. 30, 2019 09:24

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18日、ソウルのあるデパートのロレックス店の製品の棚は空っぽだった。サブマリナー、デイトナなどの人気モデルは一つも見当たらなかった。時計一つの価格が1000万ウォンを遥かに超える高価だったが、お問い合わせの製品ごとに、従業員は首を横に振った。すぐに現金で完納すると主張したが、同じ答えが返ってきた。店の従業員は、「少量入荷することもあるが、あまりにも人気が高く、そのほとんどが入ってきた日にすぐ売れる」とし、「毎日昼と夕に立ち寄るお客様も多い」と話した。

先週末、ソウルのあるデパートのシャネル売場は、ショッピングどころか入場すら容易でなかった。立ち並んでいる人数だけで40人で、店に入るのに1時間以上待たされた。待っている人があまりにも多いので、入場する順番になると、携帯電話で連絡をするシステムまで導入された。店内にやっと入場しても、購入できる製品は多くなかった。そのほとんどがあまりにも派手な色だったり、珍しいサイズの製品のみあった。希望する製品について聞いたところ、「待つしかない。いつ入荷するか分からない。頻繁に立ち寄って問い合わせるのが一番いい」という店員の答えだけを聞くことができた。

近くの他のデパートのシャネルとエルメスの店舗も事情は似ていた。店の従業員は、「当日に希望する製品を購入できる可能性はほとんどない」と話した。この日店を訪れた一人の女性客は、「数百万ウォンを払っても、ひたすら待つしかないなんて情けない」と言いながらも、店員に再入荷の予定について詳しく尋ねた。オンライン上では毎日、特定ブランド店の商品の販売状況をリアルタイムで共有する人々までできた。同じ時刻、カルティエ、ヴァンクリーフ&アーペルなどジュエリー店にも長蛇の列ができた。

●世代を超えた「ラグジュアリーホリック」

低成長、景気低迷が続いているが、2019年現在、韓国のラグジュアリー市場では全く別の風景が広がっている。人気商品は数百万ウォンの高価格にも拘わらず、入荷するやいなや、当日製品がすべて売り切れとなっている。その一部は、販売と同時に、元の価格の50〜100%ほど追い銭がつく。ロッテデパートが最近、40周年を記念してダウンジャケット専門ブランド・ムースナックルとコラボして作った商品は、価格が100万ウォンに達したが、発売と同時に400着がすべて売れた。イタリアの時計ブランド・パネライが昨年末に出した50個限定モデル「ソウルエディション」は、800万ウォン台だが、発売前にすでに事前予約販売が完了した。

産業通商資源部によると、今年1月〜6月の主要流通店のラグジュアリーの売上高は全体の10%台にとどまったが、6月は23.6%で20%台に進入後、先月までこの流れを維持している。デパート商品群別の売上比率において、ブランド品は今年1〜3四半期にわたって20%台を記録し、全体商品群の中で最も高いシェアを示した。

成長するブランド品市場は、国内主要デパートの業績にそのまま反映された。ロッテ百貨店は2017年は5.5%にとどまったラグジュアリーの売上高の上昇率が今年24.4%に伸びた。新世界(シンセゲ)デパートは、今年ラグジュアリー商品の売上高が前年比31.3%伸びた。

特に目立つのは、ぐんと下がった「消費年齢」だった。少し前までは50代や60代の中高年層の専有物だったラグジュアリーは現在、ほぼすべての世代で消費される様子を見せている。特に「ヤング(Young)ラグジュアリー」に代表される20代の若年層の顧客が大幅に増えた。新世界デパートによると、全体年齢層でラグジュアリーの売り上げが昨年より最も多く伸びた年齢層は20代で、26.9%も伸びた。ロッテ百貨店も、20代のブランド品の消費売上高が29.1%へと高騰し、全体年齢層の中で最も高い伸び率を示した。

ジュエリー・時計の分野でも、「ヤングラグジュアリー」の消費は目立つ。とある高級時計ブランドの関係者は、「基本的なエントリーモデルが1000万ウォン台で高価なのに、20代や30代の購入率が上がり続けている」とし、「高価な時計ブランドが、前例のないソーシャルネットワークサービス(SNS)とオンライン市場を攻略するのも、この若い客らのためだ」と説明した。

クレジットカードの売上統計には含まれない10代までを含めると、ラグジュアリー商品を消費する若い顧客ははるかに多いとみられる。実際、今年1月、ファッションブランド・オフホワイトとコンバースがコラボした商品の発売当時、現場のあちこちには子供っぽい姿の10代の若者たちが目立った。とある高校生は、「製品を買うために、前日から野宿した」と話した。偽物を持つことにとどまっていたかつての10代と違って、本物のブランド品を所有し始めたのだ。百貨店業界の関係者は、「最近、友人同士で店舗を訪れる生徒たちの姿が目立って増えた」とし、「一般スニーカーやバッグ2、3個を買うお金を集めてブランド品を購入し、SNSに掲載して自慢することを楽しんでいるようだ」と話した。

●誇示と自己満足が育てたラグジュアリーブーム

ラグジュアリー製品を消費する理由は、世代別に少しずつ差がある。10代や20代の場合は、同年代を対象にした誇示心理が影響を及ぼしたと見られる。SNSなどを通して拡散する有名芸能人たちのラグジュアリーへの愛も一役買った。流通業界の関係者は、「若年層にアピールするブランド品の共通点は、形式にとらわれないデザインが多く、芸能人やインフルエンサーが愛用するブランドだ」とし、「大衆歌謡の中によく登場する『フレックス』(「お金の自慢をする」という意味の隠語)文化が影響を与えたようだ」と話した。

社会新人や一般会社員の場合は、生活用品などのように繰り返して消費する品物についてはお金を節約するものの、自分をさらけ出すことのできる小さな贅沢品にはお金を惜しまない二重的行動が現れている。専門家は、低成長と不況が続く状況では、自分を少しでも誇示するために高価な製品を選ぶ傾向が濃くなると分析した。

イ・ジュンヨン明知(ミョンジ)大学消費者学科教授は、「低成長不景気に消費余力が減った消費者らは、逆説的に自分だけの小さな贅沢のための経済的余力を残す」とし、「プレミアムやラグジュアリー商品を消費しながら自尊心を高める『価値消費』が流行し、社会的には『消費の構造調整』が起きている」と語った。ヨ・ジュンサン東国(トングク)大学経営学科教授は、「経済不況の時期に、人々は落ち込んでいる気分を盛り上げるために、誇示的性格の強い象徴的商品をほしがることになる」とし、「極端なヴェブレン効果(価格が上がるのに、一部の階層の誇示慾や虚栄心などにより需要が減らない現象)が現れているとみられる」と語った。

これは、最近急激に広がっている「超低価格の消費」とも関連がある。消費の腰を担当する中産層の購買力が弱まった一方、高所得層は景気変動の影響を受けないため、彼らのブランド品の購入がさらに際立って見えるという解釈である。成太胤(ソン・テユン)延世(ヨンセ)大学経済学科教授は、「昨年末から景気状況が悪化し、中間層をなす自営業者が所得を生み出せずにいる」とし、「彼らをターゲットにする大衆的商品はより安価で出る一方、高所得層は十分な資産をもとに景気の影響を受けず、ブランド品を購入できる」と語った。中央(チュンアン)大学経済学科の李正熙(イ・ジョンヒ)教授も、「経済低迷期にも高所得層のブランド品への需要は健在だ」と語った。

専門家は、このような極端な消費構造がしばらく続くと見ている。ヨ・ジュンサン教授は、「経済の二極化がますます深刻化しており、このような消費心理は容易におさまらないだろう」と見込んだ。

●高級ブランド「韓国を先取りせよ」

来月、ギャラリア百貨店には、ランゲ・アンド・ゾーネの初の公式ブティックがオープンする。世界のトップ5の時計ブランドの一つに数えられるランゲ・アンド・ゾーネは、基本エントリーモデルが2000万ウォン台で、超高価製品だけを取り扱う。ロッテ百貨店には、スイスのプレミアム時計ブランド・ピアジェ店が来月6日オープンする。ピアジェも、時計一つの価格が数千万ウォンに達する超高価ブランドだ。

このように、ラグジュアリーの最高峰と呼ばれる最高級ブランドが韓国市場に我先に入ってくるのは、それだけ国内高級市場が成長しているという証拠だ。実際ブライトリング、パネライなどの高級時計ブランドは、最近、国内で引き続き二桁の成長率を見せている。時計業界の関係者は、「中国、日本などと違って、韓国は高級時計市場が毎年高い成長を見せている」とし、「高級時計、ジュエリーブランドが韓国市場の先取り競争を繰り広げるのは当然の現象だ」と語った。
· yunique@donga.com