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トラスの道vsカーターの道、望ましい権力者の後ろ姿

トラスの道vsカーターの道、望ましい権力者の後ろ姿

Posted May. 04, 2024 09:03,   

Updated May. 04, 2024 09:03

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「ディープステートの妨害で不当に追い出された」

英国のリズ・トラス前首相が先月18日、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで陰謀論を提起した。49日間執権した英国最短命の首相であるトラス氏は、財務省、中央銀行、予算庁など主要省庁のあちこちに左派の人物が配置され、秘密官僚集団「ディープステート(deep state)」の一員として活動していると主張した。彼らが愛国者である自身の減税政策を妨害し、意志を貫くことができなかったと述べた。

トラス氏が政権を握った2022年9、10月、英国の政府債務は国内総生産(GDP)の100%を超えた。今も同様だ。もともと国債が多く、ウクライナ戦争勃発後に深刻化した高物価と高金利で国債の利子も急速に増えている。このような状況で税金を削れば借金は増え、物価はさらに上がる。つまり、そもそも減税をすべきでないのに、無理に減税を強行し、ポンド価値を急落させたことが辞任の原因である。

トラス氏は、名門オックスフォード大学でも最上位学生だけが入学する哲学・政治・経済(PPE)を専攻した。34歳で議員になり、外交、法務、国際通商、環境など主要省庁のトップを務めた。47歳には首相になった。エリートコースだけを歩み、出世街道を走ってきたトラス氏が、実体も不明瞭な人物の工作にやられたと?世界の4分の1を支配し、今も世界6位の経済大国である祖国を侮辱することだ。

本当の目的は、トラス氏が先月出版した著書『西洋を救う10年』を宣伝するための「ノイズマーケティング」の性格が強いというのが大方の見方だ。トラス氏は同書で、汎世界的な保守主義の復活が必要であり、左派、環境団体などは一種の社会悪だと主張した。保守主義の障害である国連、世界保健機関(WHO)のような国際機関も解体しようと叫ぶ。

また、自分と路線が似ているトランプ前米大統領の再選のために選挙運動員のように動いている。今年2月、米メリーランド州で開かれたトランプ氏の遊説に参加した。トランプ氏の邸宅を訪れた各国の指導者は多いが、遊説会場に現れたのはトラス氏が唯一だ。

前首相が大西洋を行き来して物議を醸す言動に終始するのは、生活が苦しい英国庶民のイライラ指数を上げると言える。経済協力開発機構(OECD)によると、今年の英国の消費者物価見通しは2.7%で、主要7ヵ国(G7)の中で最も高い。成長率の予想値も0.4%で、ドイツを除けば最も低い。

このようなトラス氏と対照的なのがカーター元米大統領だ。現職時代はオイルショックによる経済難、イラン革命勢力の米大使館占拠や人質拘束などで人気がなかった。再選には失敗したが、退任後、各国の低所得層に家を建てる「ハビタット」奉仕活動、飢餓撲滅運動などでノーベル平和賞を受賞した。

米紙ニューヨーク・タイムズなどは、昨年2月から癌治療を中断し、ホスピスケアを受けているカーター氏がホスピスに対する肯定的な見方を広めたと評価した。多くの米国人がホスピス治療を全く受けなかったり、手遅れになるまで延期したりする中、超高齢の患者であるカーター氏が15ヵ月以上生存し、社会全般の認識を変えたということだ。

1924年10月1日生まれのカーター氏は5ヵ月後に100歳になる。退任後に美しい姿を見せる権力者が珍しい時代。ぜひ誕生日を迎えてほしい。