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EVにオールドカーのデザインを反映、企業は「ヘリテージ」構築争い

EVにオールドカーのデザインを反映、企業は「ヘリテージ」構築争い

Posted March. 02, 2024 08:48,   

Updated March. 02, 2024 08:48

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ヤン氏をオールドカーの世界に導いたのは、まさにこの古い特別さだ。ヤン氏はポニー乗用車と共に、1988年式の黄色いポニーピックアップも保有している。ヤン氏は、「最近の車は、その気になれば購入したり修理できるが、ポニーはそうではない」とし、「車に乗っていれば、写真を撮ったり、どうやって車を手に入れたのかと尋ねる人も多い」と話した。息子のヤン・シウ君(11)は、「車に乗る時は、昔の時代に戻った気がする」とし、「友達や先生も、皆父の車を不思議に思う」と話した。

韓国でも、「自分だけの車」が欲しい若い世代を中心に、オールドカーが人気を集めている。管理は難しいが、本人ならではの個性を誇る一つの文化手段として位置づけられているからだ。電気自動車(EV)の拡大とデジタル化で、かつての感性を懐かしむレトロブームも裾野の拡大に貢献している。古い「パパの車」から、トレンドをリードする「ヒップ(Hip)」な象徴としてオールドカーが浮上している。

●「韓国に10台のみ、希少性が特別さを作る」

ヤンさんのポニー乗用モデルの新車の価格は500万ウォン、ピックアップは200万ウォン台。現在は車の状態によって異なるが、乗用車は5000万ウォン、ピックアップは2000万ウォン台で取引される。10倍も価格が上がったことになる。現在、道路を走行するポニー乗用車は10台、ピックアップは100台前後であるため、希少性が大きくなったからだ。買いたくても、誰もが買えない車になったのだ。

ヤンさんの最終的な夢は、息子にポニーを譲ること。このため、インターネットにポニーの中古部品が掲載されれば、大学の受講申請のように激しい競争が繰り広げられるという。ヤン氏は、「いつどこで故障するか分からないので、あらかじめ部品を全て買っておかなければならない」とし、「部品が生産中止になったため、ない部品を探しに地方の廃車場を訪ねたこともある」と話した。

韓国国内では約12万人が加入した「クラシックカーコリア」のオンラインコミュニティが疎通の場となっている。部品を手に入れたり、修理が得意なところを見つけるのが難しいため、車種と年式による「聖地整備所」を共有している。メルセデス・ベンツのオールドカーの聖地として知られる「チョンウォンサ」のイ・グァンフン社長は、「1980年代の車が多く、部品はドイツや米国側から輸入している」とし、「最近は新車はそこそこなので、好みを重視する若い人が多く訪れる」と話した。

ソウル城東区(ソンドング)に住んでいるキム・ミョンゴンさん(41)は、1990年に生産されたポルシェ964モデルに2020年から乗っている。赤いポルシェのオールドカーがもたらすアナログの感性が好きだからだ。キム氏は、「車に乗る度に、私は特有の革の匂いとドアを閉める時のカチッという音が好きだ」とし、「パワーハンドルでもなく、駐車する時に後方カメラがなく不便な点もあるが、クラシック映画の中に入ってきたような気がして大変満足している」と話した。

オールドカーが好きな有名人も多い。財界では、三星(サムスン)グループの故李健熙(イ・ゴンヒ)先代会長が数台のオールドカーを保有していたことがよく知られている。芸能界には、ラッパーのスリーピとケコ、芸人のペ・チルス氏が代表的なオールドカーのマニアだ。1992年式のグレンジャーに乗っているスリーピがリリースした「グレンジャー」という曲には、「ロールス(ロイス)を与えても変えないという話は、ちょっと後悔はするけど、本気だった。真の成功は、お金ではない」という歌詞が登場したりもする。

●100台を超えるオールドカーを保有しEVに改造も

それなら、文字通り古くなれば、みんなオールドカーになれるのだろうか。実際、オールドカー文化の歴史が長くない韓国で、オールドカーの定義は明確ではない。一般的には、発売してから20、30年が過ぎた車からオールドカーと呼ばれる。韓国に海外自動車ブランドが本格的に正式輸入され、車種が多様化し始めた1980年代の車両から、「オールドカー」と規定したりもする。

オールドカーは、当時の時代価値を反映するという意味の「クラシックカー」と混在して使われている。李健熙会長が乗っていたオールドカーを展示しておいた三星火災モビリティミュージアムのオ・テジン・プロは、「自動車の大衆化に寄与したり、新しい技術が適用されて歴史的意味のある車をクラシックカーと規定している」とし、「EV時代をもたらしたテスラのモデル3は、時間が経ってクラシックカーの仲間入りを確実にする車だ」と説明した。

歳月の変化に合わせて、オールドカーをEVに変身させる愛好家もいる。ララクラシックモーターズのキム・ジュヨン代表は、幼い頃から自動車が好きで、100台を超えるオールドカーを保有している。自動車会社の設立を夢見ていたヤン氏は機械工学科を卒業し、大宇(テウ)自動車で技術を研究した。当時の経験を基に、オールドカーのエンジンをバッテリーと電気モーターに変えるEVの改造作業を事業へと拡大している。キム代表は、すでにポニーと現代(ヒョンデ)のアクセント、グレンジャーなど、様々なオールドカーをEVにしている。全羅南道(チョンラナムド)の規制自由特区で実証事業が進められており、早ければ来月に本格的なテスト走行が可能になる見通しだ。キム代表は、「2050年に炭素中立時代を宣言したが、現実的に多くの車両が内燃機関にならざるを得ない」とし、「安価で古い内燃車両の内部をEVにする産業は、今後大きな市場になるだろう」と説明した。

オールドカーに人生が込められている特別な事情を持つ人もいる。シン・ポニーさんは、父親がポニーの車が好きで、娘の名前をポニーにしたという。昨年7月、現代自動車は、「ポニーと共にした時間」の写真公募展を開いたが、シム氏の写真が大賞を受賞した。シム氏の受賞後、オンラインでは子供の名前を「チェネシス(チェ氏+ジェネシス)」、「クレンジャー(ク氏+グレンジャー)」にし、20年後に受賞を狙うという冗談が上がってくることもあった。

●規制対象としてでなく、「新しい文化」という認識の転換が必要

オールドカーのオーナーは、オールドカーの文化が急速に活性化しているが、社会的認識と法的制度は依然として遅れていると指摘している。現在、外国から韓国にオールドカーを輸入することは、排出ガスなどの環境規制の基準に違反し、事実上不可能となっている。外国から本人のオールドカーを引越しの荷物として持ち込む時のみ、例外的に規制が免除される。このため、帰国する他人に手数料を払って、仲介人を雇う便法を使わざるを得ないのが実情だ。

韓国国内でオールドカーを所有していても、安心して運転するのは容易ではない。排出ガスの基準が5等級の車は、ソウルの四大門内に入ることができない。この基準は、2025年に4等級まで拡大する予定だ。

オールドカーを古くて効率が落ちるという規制の観点ではなく、文化の多様性をもたらす観点でアプローチすべきだという意見が出ている。自動車文化が根強い米国や日本、欧州などの先進国では、オールドカーの環境規制を最新基準ではなく、車両の生産当時の基準を適用する柔軟性を示している。

キム代表は、「米国と日本などの先進国では、自動車文化を尊重する認識が社会のすそ野に敷かれているためだ」とし、「オールドカーは、車に乗る回数が少なく、距離が短いため排出総量はむしろさらに低くなりうる、車主が環境負担金を多く出す方式の代案を十分に用意できる」と強調した。


具特敎 kootg@donga.com