
政府は、人工知能(AI)の3大強国とともに「フィジカルAI」先導国への飛躍を掲げているものの、この分野でも中国がすでに圧倒的優位に立っているとの分析が出ている。早くからロボットバリューチェーンの柱であるハードウェアを先取りするなど、生態系を急速に拡大しているという。とりわけ、世界のロボット関連専攻学生の42%が中国大学の学生であるほど、人材確保の面でも先行しているとの指摘だ。
●ロボット部品の90%を国産化しサプライチェーンを独占する中国
韓国知能情報社会振興院(NIA)がまとめた「中国が主導するAI+ヒューマノイドロボット産業の現状」と題した報告書によると、中国はロボットで代表されるフィジカルAI市場で「独走態勢」を見せている。ロボットハードウェア分野で強みを持つうえ、今年初めのディープシークの登場で、ロボットの「脳」に当たるAI技術まで確保し、ロボット開発を加速させている。
中国はロボットハードウェアを構成する部品の90%を国産化している。実際、日本のコンサルティング企業である野村総合研究所によると、昨年12月時点で人間に似た形態のロボットであるヒューマノイド本体を開発する企業の半分は中国企業だった。韓国の専門家は「同じロボットを作るとしても、米国で製造するには中国で部品をすべて調達してこなければならず、結果として価格が高くなる。これが中国のロボット生態系が急拡大している背景だ」と説明した。
膨大なデータも中国のロボット生態系を支えている。AIがロボットの「脳」だとすれば、AIを学習させるデータは良質の「教材」に当たる。特にフィジカルAIの場合、活用される産業環境に特化した実世界(リアルワールド)データが不可欠だ。昨年の中国のデータ生産総量は約41ZB(ゼタバイト=1ZBは10の21乗バイト)で、世界全体の約28%を占める。
テンセント(Tencent)から出資を受けた中国ロボット企業「AGIBOT」は、上海に「データ収集工場」を設立し、約100台のロボットを投入して毎日最大5万件のリアルワールドデータを収集している。
業界では、ロボット活用が大衆化すると、学習データがロボットメーカーに帰属するため、市場を先取りする企業とそうでない企業との間でデータの「富者はますます富み、貧者はますます貧しくなる」現象が起きるとの見方が出ている。
●中国のロボット専攻学生、世界の42%
人材プールも圧倒的だ。昨年基準で、中国大学のロボット専攻の在学生数は約58万人で、世界全体の42%を占める。
さらに中国は、海外の優秀な人材を誘致するための「千人計画」も推進している。今月6日、野党「国民の力」の崔秀珍(チェ・スジン) 議員室が国家科学技術研究会(NST)および傘下の政府拠出研究機関から受け取った資料によると、昨年初め、政府出資研究機関の研究者数百人が千人計画関連のメールを受け取った。KAIST教授を対象にした調査でも、同時期に149人が同様のメールを受信したことが分かった。
韓国政府出資研究機関の関係者は「政府がフィジカルAI育成に乗り出した以上、人材育成を含め、大規模な投資と研究開発(R&D)、規制改善などを総括するガバナンス体制の構築が必要だ」とし、「製造強国としての強みを生かし、大規模データの確保と迅速な実証・商用化が必要だ」と提言した。
チェ・ジウォン記者 jwchoi@donga.com






