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輸出過去最高でも手放しで喜べない理由

Posted November. 10, 2025 08:55,   

Updated November. 10, 2025 08:55


最近、韓国の輸出が連日、過去最高を更新している。華々しい輸出成績を牽引したのは、スーパーサイクル(超好況期)を迎えた半導体だ。先月の全体輸出額に占める半導体の割合は26.4%。韓国輸出における半導体の貢献度が4分の1を超えたことになる。10年前の同時期には11.5%にすぎなかったことを考えると、成長ぶりは驚異的だ。厳しい経済環境の中、半導体が奮闘していることは喜ばしいが、輸出好調の知らせを手放しで喜べない理由がある。過去最大の輸出額の陰に、基盤産業である製造企業の不振が隠れているからだ。全体輸出は増えたものの、自動車・自動車部品、鉄鋼など一部品目の輸出は1年前に比べて10~20%減少した。

製造業の危機は、今年下半期に本格化した石油化学や鉄鋼の構造調整だけの問題ではない。今月、1年前に比べて18.9%も急減した自動車部品産業も、静かに深刻化している。最近会った国内自動車部品メーカーのある代表は、中国製の低価格攻勢で周辺の部品会社が倒産していると吐露した。企業が国産の代わりに安価な中国製部品を使って車を組み立てているためだ。外見は韓国ブランドでも、中身は中国製だらけの「メイド・イン・コリア」が静かに広がっている格好だ。こうした状況で韓国の部品メーカーは低価格の中国製部品に押され、受注を減らしている。

政府と中小企業が中国製低価格攻勢に迅速に備えられなかった点は残念だ。国内中小企業製品の原価競争力を高める努力を粘り強く続けるべきだった。米国の関税攻撃を受け、これまで輸出市場を多角化できなかった点も痛手だ。最近、対米輸出の減少分を東南アジアや欧州である程度埋め合わせたとの評価があるが、どこまで持続できるかは疑問だ。産業現場では、企業が対米輸出の穴をとりあえず急いで塞いだだけだという。

韓国経済の根幹である製造企業の衰退は、雇用不足を予告する。産業団地では、中国製に押されて受注を取れない企業が廃業し、勤務日数を減らしている。人工知能(AI)により「雇用なき成長」が米国から顕在化しており、これまで雇用を生み出してきた製造業の危機はさらに懸念される。

製造業が倒れれば地方経済も崩れやすい。製造拠点が根付いた地方では、中小企業が資金難に陥り延滞率が急増している。今年第3四半期(7~9月)、5大地方銀行の延滞率は4大市中銀行の2倍を超えた。新規投資どころか、借入金利すら返せない企業が多いということだ。地方で資金が回らず雇用が減れば、人口流出が加速し、景気悪化の悪循環が深まるだろう。

基盤製造企業を守るには、低価格競争力を超える技術力を育てなければならない。中小企業の技術開発に向け、政府の研究開発(R&D)資金支援が切実だとの指摘が多い。政府が米中の保護政策のせいで国内企業が不利になった部分を点検し改善する必要もある。さもなければ、韓国は半導体以外に強みがない、中国製部品の組立基地に転落するとの危機意識を持たなければならない。製造エコシステムが崩れれば、半導体の未来すら担保できない。