Go to contents

「コロナ時代」から抜け出せない中国

Posted May. 27, 2024 08:45,   

Updated May. 27, 2024 08:45

한국어

中国北京に赴任する前は、現地で公安(警察)と頻繁に出会うのではないかと心配した。杞憂だった。その代わり、一日に何十回も、路上やオフィスなどで顔を合わせる人々がいた。「黄色いシャツの男」、すなわち食べ物の配達プラットフォーム「美團」の配達運転手だ。

彼らは、食べ物、スーパーの商品、生活必需品などはもちろん、酒と薬までわずか30分~1時間で家のすぐ前に持ってきてくれる。飲食店街とショッピングモールのあちこちで、数百人ずつ陣取っている配達運転手の行列をいつも見ることができる。昨年、中国の飲食配達業界の従事者だけで1000万人を超える。

中国配達プラットフォームの成長は、新型コロナと関連がある。特に「ゼロコロナ」政策を通じて、厳しい防疫政策を行った中国では、その影響が途方もないものだった。

感染者が1人でも出れば、該当マンションの出入り口を鉄線で巻いてしまったので、孤立した状況で塀越しに食べ物と生活必需品を渡した配達員がいなかったら、市民の生存自体が不可能だった。2019年に398万人だった美團所属の配達運転手は、昨年は745万人に急増した。

配達員の多くは、働き口を求めて都市に流れ込んだ農民工だ。2020年の農民工の平均月給は4100人民元(約77万ウォン)。当時、北京や上海など主要都市の配達運転手たちは7000元前後を稼いだので、人気が高くならざるを得なかった。大変で危険な工場の仕事を敬遠し、比較的通勤が自由なサービス業を好む若年層の認識も加わった。

最近、状況が急変している。防疫規制が解除され、人々の外部活動が増えた。家族と飲食店で食事をし、スーパーにも直接行く。このため、配達注文は以前のようではない。一人の美團配達運転手は、「昨年初めは一日に40件の注文を受けたが、今は20件も容易ではない」と打ち明けた。配達する人が増えると、配達距離(キロ)によって与えられる手数料の単価も下がり、1ヵ月に4000元を稼ぐことも容易ではないという。

収入が半分に減ったが、配達運転手に他の選択肢は多くない。中国の実体経済がなかなか回復できないためだ。雇用効果の大きい不動産市場は、まだ持ち直しの兆しがない。かつて建設労働者や不動産仲介人をしていて、配達業界に足を踏み入れた人々が、以前の職場に戻るのは難しい状況となっている。今年4月の青年(16~24歳)の失業率は14.7%で、依然として高い水準を記録している。

カーシェアリングサービス業界の状況も同様だ。コロナ禍の中で職を失った多くの人々は、滴滴出行のような車両共有業者に運転手として就職し、生計を維持している。しかし、最近、共有車両サービスの需要が増えていない。

中国インターネットネットワーク情報センターによると、この4年間、共有車両の運転者は127%増加したが、呼び出しサービスの利用者は44%増にとどまった。最近、重慶や江西省など一部の地方政府は、住民に対し、「公有車市場は頭打ちの状態なので、これ以上運転手として就職することは考えるな」と呼びかけた。

中国当局は、今年の春節(中国の旧正月)や最近メーデーの連休が過ぎると、繰り返し「国内旅行とオンライン消費が増えた」と明らかにした。経済が回復するというメッセージを強調しようという狙いだ。しかし筆者が会った中国人たちは、一様に、「『ゼロコロナ』で押さえつけられていた消費が一時的に持ち直しただけで、本当の回復は見守らなければならない」という慎重論を提起した。今年7月に開かれる第20期共産党中央委員会第3回全体会議(3中全会)で、当局が打ち出す経済対策がさらに重要になった理由だ。