Go to contents

扇動とテロ

Posted May. 21, 2024 09:09,   

Updated May. 21, 2024 09:09

한국어

アテネの民主政は、僭主ペイシストラトスの登場で危機を迎える。ペイシストラトスは冷酷な暴君というよりは狡猾な独裁者だった。文明を発展させる第1の原動力は欲求である。民主主義は、互いに対立するしかない様々な欲求が共存しながら生じることに最大の長所と存在価値がある。一方、欲求と葛藤が調整されず、互いに反目し、脅かすようになると、強制的な仲裁論が人気を得るようになる。民主主義の砦であったアテネも民主主義が没落し、僭主政が台頭するが、その主役がペイシストラトスだった。

ペイシストラトスが死去すると、2人の息子が権力を継承した。兄のヒッピアスは大衆の欲求をよく知り、巧みに操った。独裁体制が固まっていった。これにペルシャとの戦争の脅威が高まっていったことも、僭主政の安定に一役買った。

民主政支持者たちが無力感にさいなまれていた紀元前514年、都市祭りの最中、ハルモディオスとアリストゲイトンという2人の青年が弟のヒッパルコスを暗殺した。暗殺の理由は、独裁への報復という説もあれば、個人的な恨みだったという主張もある。いずれにせよ、アテネの民主政支持者たちはこの義挙を称賛し、2人の青年の銅像を制作して広場に建てた。この像はいつの間にか失われた。現在、ローマ時代のレプリカがナポリ博物館にある。 

スロバキアのフィツォ首相が襲撃された。一昨年前には日本の安倍晋三首相が殺害された。それだけか。罪のない人に対する無差別な暴力が世界に蔓延している。戦争、コロナ、インフレ、ポピュリズム、過度な正義と過度な怒りが盲目的な暴力、極端な方法で噴出している。

政治家の無責任、扇動、ポピュリズムも一線を越えている。あらゆる人が対立と怒りを助長し、扇動された人々に自分がカタルシスであるかのように振る舞い、富と名誉を享受する。テロは解決策ではない。真の解決策は、大衆が目覚めて初めて出てくる。