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挫折した希望、成功した歴史

Posted May. 25, 2023 08:34,   

Updated May. 25, 2023 08:34

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冷たい海の上に割れた氷の破片が絡み合っている。中央に尖った氷片の横には難破した船の一部が見える。冷たい氷の海に半分以上が沈んでいる。ドイツの画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒが描いた「氷の海」(1823~24・写真)は、北極の氷の海を描いている。果たして画家は北極に行ったことがあるのだろうか。このような難破シーンをどうやって描いたのだろうか。

実はフリードリヒは、北極どころか長距離の船旅もしたことがなかった。スケッチのために山や野原に出かけただけで、生涯、家に引きこもっていた。1820年代初頭の冬、フリードリヒはエルベ川に氷が流れているのを偶然目撃した。珍しい自然景観に魅了されたフリードリヒは、その場で油彩で3点のスケッチを制作した。数年後、それをキャンバスに移し描き、比率と構図をよりドラマチックに仕上げた。北極の氷の海というテーマは、英国の探検家ウィリアム・パリーの北極航海からインスピレーションを得たものだ。パリーは1819年から1820年の間、北西航路の入り口であるパリー海峡を初めて通過し、1827年には人類初めて地球の最北端に到達することに成功し、その話を本にもした。つまりフリードリヒは、実際の自然を参照しつつ、想像力を駆使してこの超現実的なシーンを描いたのだ。砕け散る氷と沈む船を描いたにもかかわらず、画面は音が消去されたように静かだ。海がすべての騒音を飲み込んだような静寂が流れている。

この絵は当初「挫折した希望」というタイトルで呼ばれた。実際に遭難事故を起こした「希望号」という船にちなんだ名前だ。しかし、画家が挫折をテーマに描いたわけではない。絵の中の空がだんだん晴れてきているからだ。すぐに日差しが差し込んできそうだ。

歴史は挑戦する人たちが作ってきた。船は希望と挑戦の象徴である。たとえ失敗しても、人類は挑戦し続けてきた。成功した歴史は結局、数多くの試行錯誤と挑戦、失敗の末にやってくるものであるというメッセージを画家は伝えたかったのではないだろうか。