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戦争と本

Posted May. 18, 2023 08:30,   

Updated May. 18, 2023 08:30

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金髪の少女が髪とマントを風になびかせて崖の上に立っている。振り返ることも前に進むこともできないまま、足元の荒涼とした風景を眺めている。少女は何のために本を抱えて、その場所に一人で立っているのだろうか。

19世紀の米国の画家イーストマン・ジョンソンは、リンカーンなどの政治家の肖像画で有名だが、風景画や一般人をモデルにした風俗画も得意だった。「私が残した少女」(1872年頃・写真)は、ジョンソンが48歳の時の作品で、南北戦争時代の少女が描かれている。幼く見えるが、指に結婚指輪をつけていることから既婚者であることがわかる。少女は戦場に行った夫を待ち、崖の上を歩いている。足元に見える地面は柵で二つに分かれ、周囲は霧と暗雲が立ち込めている。内戦が起こった不安な世界を暗示している。

実はこの絵は南北戦争が終わって数年後に描かれた。100万人以上の犠牲者を出した恐ろしい戦争は終わったが、米国社会はまだ混乱と葛藤を抱えていた。内戦だったので欧州の画家たちのように戦場の英雄を美化することもできなかった。ジョンソンは、戦争が個人に与えた影響と不安な雰囲気を捉えて描写する方法を選んだ。

絵のタイトルは18世紀の英国の民謡に由来する。戦場に行った兵士が故郷に残した恋人を懐かしむ歌で、南北戦争時代に南軍、北軍の双方で人気だった。この絵を描いた当時、ジョンソンは遅く結婚し、2歳の娘を持つ夫であり父親だった。家族の大切さをこれまで以上に実感していた時だった。

少女が両手で握りしめている本は、聖書や文学、あるいは哲学書だろう。それらの本が彼女に道を示してくれたのだろうか。慰めを与えることができたのだろうか。おそらく画家は絵を通して問いかけたのだろう。本で伝播された世界のあらゆる知識と宗教、文学、哲学、思想はなぜ戦争を止められないのか、政治家が決めた戦争になぜ若者が犠牲にならなければならないのか。