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大統領の看護法拒否、対立解消の対策はなぜないのか

大統領の看護法拒否、対立解消の対策はなぜないのか

Posted May. 17, 2023 08:15,   

Updated May. 17, 2023 08:15

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尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が16日、野党「共に民主党」の主導で国会本会議を通過した看護法制定案に対し、再議要求権(拒否権)を行使した。現政権に入って糧穀管理法改正案に続き2度目の拒否権行使だ。尹大統領は、「看護法は職域間の過度の対立を引き起こした」とし、「職域間の協議と国会の熟議の過程で対立が解消されなかった」と明らかにした。拒否権行使に反発する看護協会は集団行動に出る構えであり、看護法をめぐる社会的対立は大きくなる見通しだ。

医療法から独立して別の看護法を制定することは看護界の長年の悲願だった。しかし、看護助手など他の保健医療関係者は、なぜ看護師だけを別の法律で扱うのかと反発した。看護界は、看護法制定で単独開業はできないと主張するが、医師など他の職種は看護師の領域侵犯は時間の問題だと反発している。政府・与党は仲介案として、「地域社会・医療機関の文言の削除」などを提示したが、最大野党「共に民主党」と看護協会の反対で交渉は決裂した。看護法をめぐる医療界の対立が勢力対決に発展した結果だ。

前代未聞の新型コロナウイルス感染症の危機は、医師、看護師など医療従事者の献身的な犠牲と努力があったことで克服することができた。このような医療界が職域対立を繰り広げることで、医療大乱を懸念する国民の不安感は大きくなっている。

こうなればなるほど、対立を調整する仲裁者の役割を果たすべき政界はむしろ対立を助長した。過半数の議席を持つ「共に民主党」は、看護法を本会議で一方的に処理した。与党「国民の力」は積極的な交渉よりも野党を非難することに汲々とした。看護法が野党主導で処理されれば、大統領の拒否権行使が予想されたにもかかわらず、与野党は対立に終始したのだ。与野党ともに来年の総選挙を意識し、医師や看護師など職域別の票数計算に夢中になり、妥協のための真剣な努力を放棄したという批判が出る理由だ。

現行の看護法で国会で再採決すれば、在席者の3分の2の賛成が難しく、破棄される公算が大きい。糧穀法のように大統領の拒否権に続く再採決の否決という悪循環があってはならない。そのため、国政を担う政府・与党は、無条件に野党と看護界のせいにしてはならない。より積極的に妥協のための対立解消策を模索する必要がある。尹大統領は候補時代に看護協会を訪問した際、看護法制定の要請に対して「合理的な結果が得られるよう議員を説得する努力をする」という趣旨の発言をした。公式の大統領選公約ではないにしても、事情の変更を説明するなど、より真摯な対話に取り組む必要がある。