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子どもの誕生

Posted May. 04, 2023 08:43,   

Updated May. 04, 2023 08:43

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新しい生命の誕生は確かに祝福だ。しかし、ドイツの画家オットー・ディクスは、生まれたばかりの自分の息子を醜く、奇妙な姿で描いた。目に入れても痛くない息子を画家はなぜこのような姿で描いたのだろうか。

ディクスは、第1、2次世界大戦からドイツの敗戦と分断など、ドイツの歴史の中で最も激動の時代を生きた画家だ。参戦して最前線で戦い、直接目撃した戦争の惨状を真摯かつ風刺的に表現した絵で有名だ。人生に悲劇だけがあるわけではない。1927年はディクスの人生で最も幸運な年だった。母校であるドレスデン美術大学の教授になり、念願の息子も得た。ディクスは息子のウルスルが生まれた後、家族の肖像画の連作を始めた。「芸術家の家族」(1927年・写真)が代表作だ。ディクスが画面構成のために古典時代の聖母子像を参考にしたのは明らかだ。聖母が赤ん坊のイエスを膝の上に抱き、愛おしそうに見つめる構図をとっている。聖ヨセフがいるべき場所には画家自身が、洗礼者ヨハネの場所には娘のネリーが描かれた。しかし、息子は赤ん坊らしからぬ不気味な眼差しで意味深な笑みを浮かべている。絵の外の観客を見つめ、私たちの視線を惹きつけるのは、ネリーの瞳と手だ。無邪気な表情で赤いカーネーションを弟に渡している。伝統的な聖母子像で聖母が赤ん坊のイエスに渡すこの花は、イエスの受難を象徴している。ディクスは、母親ではなく姉が弟に花を渡す場面を描くことで、戦争が同世代がモンスターとなって殺し合う恐ろしい悲劇であることを告発している。

暴力の時代に生まれた子どもは祝福なのか。ディクスは子どもたちが背負う過酷な運命を、イエスが受けた苦難に例えている。実際、ナチス政権が誕生し、ホロコーストの悲劇が始まり、やがて第二次世界大戦が勃発した。ディクスも退廃芸術家というレッテルを貼られ、解雇された。それでも子どもの誕生は嬉しいもの。父親は歯を剥き出しにしてただ笑っている。