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ある帰郷

Posted April. 28, 2023 08:15,   

Updated April. 28, 2023 08:15

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長く異郷に留まっていて帰郷の途についた旅人なら、近づく故郷を思い出すことはこの上ないときめきであり、胸いっぱいの感激だろう。その軽快な足取りであり、浮き立った心境を何に例えるだろうか。ところが詩人は、「故郷に近づくと、一層怖くなる心情」になる。しかも故郷の人に会っても「どうしても家の消息を聞けない」。なぜだろうか。聞く気になれないからだ。気になるが、聞けない矛盾心理は、不安感に起因する。家族は平安であるという小さな希望を壊したくないため、努めて好奇心を抑えようとしたのだ。これはまた、当時の詩人の立場とも無縁ではない。流刑地の広東地方から密かに逃げて帰郷の途についたため、身分の露出が恐ろしくもあっただろう。武側天の側近としてあらゆる贅沢を享受していた詩人は、女皇帝が追放されて荒涼とした奥地に左遷され、洛陽帰還が厳しくなると脱出を決行したのだ。詩人の密かな帰郷が歓喜につながるかはわからない。洛陽とはかなり遠い漢水を通りながらも、「故郷に近づいた」ことを感じたなんて、心理的にすでに帰郷の成功を予感したのかもしれない。

宋之問は、唐代の律詩の礎を築いた人物。臣下たちと詩才を競って、即席で皇帝の絹巻物を下賜されるほど詩才に優れていた。出世のために女皇帝の男寵(性的に女皇帝から寵愛を受ける美男子)に媚び、自ら男寵になろうとして挫折したり、甥の詩句を奪おうとして失敗すると、その命を奪ったというエピソードが汚名として残っている。