Go to contents

画家の信ずる心

Posted April. 06, 2023 08:25,   

Updated April. 06, 2023 08:25

한국어

ロシア帝国時代、ユダヤ人は差別と迫害の対象だった。正規の教育はもとより、居住地の自由も許されなかった。多くのユダヤ人芸術家は活動するために自分がユダヤ人であることを隠し、否定した。しかし、マルク・シャガールは違った。ユダヤ人としてのアイデンティティを芸術に取り入れ、公然と表現した。

「白い磔刑」(1938年・写真)は、シャガールがフランスに滞在した時期に描いたもので、イエスをユダヤ人殉教者として描いた初の作品だ。イエスのユダヤ人アイデンティティを強調するために、祈る際に用いるショールをまとい、いばらの冠は白い被り物に変わった。十字架の上には、イエスの死を悼む天使と聖母の代わりに、ユダヤ人の服装をした3人のラビと女性指導者が描かれた。十字架の両側には、ユダヤ人虐殺の恐怖と悲劇が描かれている。画面左側には、略奪され燃える故郷を後にして船で逃げる難民たちが登場し、右側にはシナゴーグと律法書が炎に包まれる様子が描かれている。一番下には、恐怖に怯える子どもを慰める母親がいる。

シャガールがこの絵を描いた当時、ドイツのナチス政権が犯したユダヤ人虐殺の恐怖が欧州中に広まっていた。芸術も例外ではなかった。政権の意向に合わない多くの芸術作品が「退廃芸術」と規定され、没収されたり、燃やされたりした。ナチス軍は、ユダヤ人画家シャガールの芸術にも退廃の烙印を押し、嘲笑した。しかし、シャガールは現実を絶望的に表現したわけではない。イエスの足元の燭台を見ると、1つのろうそくは消えたが、5つは明るく輝いている。苦難と逆境、死さえも乗り越えたイエスの復活を象徴しているのだ。

シャガールはこのようにイエスの殉教と復活を同時代の出来事と結びつけることで、戦争と暴力の加害者に絵で警告している。筆が手にする唯一の武器だったのだ。シャガールが恐れながらも勇気を出せたのも、十字架刑に処されたイエスの顔が穏やかに見える理由も、艱難辛苦の果てに正義の神の裁きがあると強く信ずる心があったからだろう。