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春の言葉で

Posted March. 02, 2023 08:20,   

Updated March. 02, 2023 08:20

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黄色い花が咲く野原に2人の若者がいる。裸の少年は片足と腕を曲げた姿勢で正面を見つめ、青いドレスを着た少女は膝をついたまま少年に向かって口で息を吹きかけている。美しくも奇妙な光景だ。いったい彼らは誰で、何のためにこんなことをしているのだろうか。

フェルディナント・ホドラーはスイスを代表する象徴主義の画家だ。ホドラーは対象をリアルに描写するのではなく、外見の裏に隠された象徴を表現しようとした。1890年代以降、愛、死、希望、信仰といった人間の根本的なテーマに没頭したが、この絵(「春」・1901年・写真)は愛を扱っている。野原に咲く黄色い花と春というタイトルは、若者の男女の愛が次第に大きくなることを象徴している。しかし、2人の視線と姿勢は全く異なっている。同じ場所に一緒にいるだけで全く意思疎通を取っていない。少女は春の暖かさを伝えようとしているのか、全力で少年に向かって息を吹きかける。とても積極的だ。一方、少年は無頓着なのか恥ずかしいのか、防御的な姿勢をとっている。2人とも顔を赤らめていることから、好き同士なのだろう。愛の表現が不器用な若者の姿のようでもある。

2人のモデルは、ホドラーの姪と息子のヘクター。当時、息子は14歳だった。この絵を描いたとき、ホドラーはヘクターの母親と別れた後に再婚した妻とも離婚した状態だった。恋に不器用だったのは、絵の中のモデルではなく、むしろ画家自身だった。

意思疎通が取れない絵の中の自分が嫌だったのだろうか。ヘクターは2年後にエスペラントを学び始め、21歳になった1908年に世界エスペラント協会を設立した。「希望する人」という意味を持つエスペラントは、1887年にポーランドの医師ザメンホフが考案した国際的な意思疎通のための人工言語だ。父と違って息子は愛する人だけでなく、世界の人々と意思疎通する希望を持っていたようだ。春のように暖かい言語で。