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反戦の叫び

Posted February. 23, 2023 08:46,   

Updated February. 23, 2023 08:46

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エルンスト・ゴンブリッチが書いた『西洋美術史』は1950年に出版されてから800万部以上売れた世界的なミリオンセラーだ。688ページに及ぶこの大著に女性美術家は全く登場しなかった。1994年のドイツ語改訂増補版で一人追加されたのが、ケーテ・コルヴィッツだ。この有名な本に唯一名前を載せることができたこの女性は、一体どのような人物なのか。

コルヴィッツは1871年、プロイセン王国時代、裕福な中産階級の家庭に生まれた。美術を勉強した後、24歳の時に医師と出会って結婚し、民衆の生活に目を向ける。夫はベルリン郊外に無料診療所を開き、貧しく疎外された人々のために生涯を捧げた。コルヴィッツも下層民の生活に深い関心を持ち、不条理な社会現実を描いた作品を制作した。

第一次世界大戦はコルヴィッツの暮らしと芸術を完全に変えた。次男のペーターが戦死したからだ。まだ18歳だった。息子を失った母親は、反戦メッセージを伝える芸術家に生まれ変わった。

第一次世界大戦が終わった後、コルヴィッツは「戦争」というタイトルの連作木版画を制作した。その中で「母たち」(1922~23年・写真)が最も有名だ。複数の女性がバリアを張るように抱き合っている。子どもたちを守るためだ。母たちも不安で怖いのは同じだが、子どもを守るためには強くなるしかない。支え合い、固い塊となった彼女たちの姿は、祖国の名誉のために子どもを戦場に送り出したドイツの母たちの苦しみと犠牲を想起させる。貪欲な軍国主義の冒険のために子どもを失いたくないという意志の表れでもある。

「これ以上、誰も死んではいけない。種を押しつぶしてはならない」。反戦の画家コルヴィッツの叫びだ。彼女は戦争と暴力で子どもを失ったすべての母親を代表するアーティストだった。ゴンブリッチは記録していないが、後世の美術史家たちは彼女を20世紀のドイツ美術を代表する最高の民衆芸術家、版画家と評価している。