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青年時代の誘惑

Posted June. 23, 2022 09:10,   

Updated June. 23, 2022 09:10

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成功したすべての芸術の巨匠には無名時代があった。バロック絵画の開拓者と称賛されるカラヴァッジョも20代初めまでは他の画家の仕事の手伝いをする助手にすぎなかった。ジプシー女が若い男の手相を見るこの絵は、カラヴァッジョが描いた初期の代表作だ。青年画家はどうして、わざわざ「占い師」という主題を選んだのだろうか。

カラヴァッジョは、ミラノで13歳の時から徒弟生活をし、画家としての訓練を受けた。カラヴァッジョがローマに来たのは1592年、21歳の時だった。血の気が多いことで有名だった彼は、暴力事件を起こしてローマを逃げ出す。住む所も金もなく、極度に窮乏していたが、優れた才能のお陰ですぐに道が開かれた。ローマ教皇クレメンス8世の後援を受けていた画家ジュゼッペ・チェーザリの工房で助手を務め、花と果物を描いた。しかし、チェーザリと大ゲンカをし、助手の仕事も止めてしまった。カラヴァッジョは先が見えなかった時期に「占い師」を描いた。しかも2度も。絵の中のジプシー女は、騎士のように格好よく着飾った少年の手を握り、手相を見ている。運勢を話すふりをして彼の指輪を抜き取ろうとしている。男は女の美貌と甘い言葉、ソフトなスキンシップに魅せられ、恍惚とした状態だ。指輪が指から抜き取られていることも全くわからない。世の中の経験のない未熟な男が富を誇示し、街頭で会ったジプシー女に一杯食わされたのだ。聖書の内容ではないこのような日常の教訓を含んだ風俗画は、当時のローマ人にとっては全く新しいものだった。新鮮な主題を、ウィットを効かせて表現したこの絵は、数多くの複製画が生まれるほど人気を呼んだ。

「占い師」は無名のカラヴァッジョに翼をつけた。第2バージョンをデル・モンテ枢機卿が購入した後、画家としての名声を得るようになる。この絵が与えるメッセージは、もしかすると不安だった青年画家が自ら胸深くに刻みたかったことなのかもしれない。苦しい時であればあるほど見知らぬ人の甘い誘惑と過度な親切を警戒せよ!

美術評論家