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最悪の展望から見出す最善の道

Posted April. 25, 2022 08:36,   

Updated April. 25, 2022 08:36

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「私たちが生きていかなければならない世の中はリスクに溢れる世の中だが、自ら作ったリスクで未来を決めなければならない世の中でもある」(ウルリヒ・ベック『世界リスク社会』)

 

過去、社会的リスクは防災技術や保健衛生などの欠乏で起きた。一方、現代のリスクは、科学技術の進歩による過剰で発生する。気候変動などは外部要因ではなく私たちが自ら作ったリスクだ。文明によって汚染された地球は、今や逆に文明を脅かしている。このようなリスクは文明が失敗したからではなく成功して起きたので、簡単に抜け出すことはできない。

 

科学技術は確実な一方、不確かで、問題を解決する一方、新たな問題を起こす。科学技術の不確実性を減らすためにより多くの合理的統制と制度を動員すればするほど、不確実性だけが一層増すことになる。この「不確かなリスク」は不安を大きくするが、否定的な面だけがあるのではない。

近代社会の社会変化の動力が社会的不平等なら、現代社会では全地球的な不安が変化を導いている。不安は理念の相違や経済的な利害関係を飛び越え、社会全体を連帯させる。危険状況では皆が共に新たな道を模索する「解放的破局」が起きるのだ。言い換えれば、私たちが危険を認識することになれば、見えなかった真実が現れ、省察を通じて古い世の中を脱皮させることができる。最悪の展望から最善の道を見出すことになるのだ。

 

作家のチョ・ヨウルは、「私たちの危険は私たちの敵ではない。私が体験する危険は私に与えられた最高の祝福だ」と言った。傷の隙間に入り込む世の中の真実が、私たちを鍛練させ、さらに強い治癒力を得るということだ。誰も全地球的危険から抜け出すことはできない。この真実によって、私たちはより良い世の中に向かって進むだろう。