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墜落する者の翼

Posted April. 14, 2022 08:22,   

Updated April. 14, 2022 08:22

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イカロスは、ギリシャ神話に登場するアテネの発明家ダイダロスの息子だ。蜜蝋と羽で作った翼をつけて、太陽の近くまで飛んで墜落した。純理に逆らう過度な欲望のため、悲惨な最期を迎えたイカロスの物語は、後代に多くの文学家や美術家にインスピレーションを与えた。

ロシア生まれのフランス画家マルク・シャガールも、イカロスをテーマに絵を描いた。イカロスは、体が直角に折れたまま空から落ちている。血のように赤色の底に落ちることは明らかだ。太陽は黒く変わり、画面下の村には無重力状態で空中に浮遊する動物と人々が見える。歓声を上げているのか、助けようとしているのか、ある人々は墜落するイカロスに向かって手を上げ、またある人々は彼の不幸に無関心であるかのようにあまり気にも留めない様子だ。

神話によると、ダイダロスは息子とともにクレタ島の迷宮に閉じ込められると、翼を作って空に舞い上がり脱出する計画を立てた。息子に翼を与え「蜜蝋が溶ける可能性があるので、太陽の近くには絶対行かないように」と念を押した。父が先に舞い上がり、息子が後をついていった。いざ脱出に成功すると、イカロスは父親の警告を無視してさらに高く飛び上がり、太陽で蜜蝋が溶けて翼が落ちて墜落した。自然の法則に逆らった欲望の対価は、あまりにも残酷だった。シャガールは、この神話を別の観点から説明する。太陽の近くに舞い上がるためには、完全な自己動力が必要だが、イカロスはそのような十分な力も知恵もなかったため、結局海に墜落するしかなかったという。

シャガールがこの絵を描いたのは、88歳の時だった。人生の晩年に、画家はイカロスの神話を通じて世の中の道理を振り返り、自分の人生を省察しようとしたのだろう。自由に対する強い熱望、もっと高く飛翔したい夢、純理に逆らってまで成就したい過度な欲望、他人の苦痛や不幸に対する我々の態度などを、この絵の中にすべて盛り込んでいる。

美術評論家