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「目の見えない彼女たちも同じ『ママ』です」、視覚障害者の母親3人の子育て記

「目の見えない彼女たちも同じ『ママ』です」、視覚障害者の母親3人の子育て記

Posted March. 10, 2022 08:35,   

Updated March. 10, 2022 08:35

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3歳になった子供に離乳食を食べさせる3人の母親がいる。一人の母親は、子供の服を脱がせた後、自分の服も脱ぐ。服に離乳食がいっぱいついてしまうのを防ぐためだ。もう1人の母親は、プラスチックのとても軽いスプーンを使っている。子供が食べ終わったかどうかを、スプーンの重さで確認するからだ。子どもを自分の膝に座らせ、手で子どもの口を確認しながら離乳食を食べさせる母親もいる。彼女たちは、目の前が見えない視覚障害者の母親だ。

8日に会った「ただのママ」(時空社)の著者であり、3児の母親のユン・ソヨンさん(36)は、「視覚障害者の母親たちは、数え切れないほどの試行錯誤を経て、子どもと自分に最も適した育児法を見つけている」と話した。4日に出版された本には、視覚障害を持つ3人の母親が子どもの育て方や障害を持つ親に対する偏見などが盛り込まれている。児童福祉を専攻し、幼児教育の修士号を取ったユンさんは、博士号のテーマに「視覚障害者の母親の子育て」を決めた。4カ月間、各家庭を6回ずつ訪問し、3時間ずつ彼女たちを観察した。

視覚障害者の母親たちは、離乳食を食べさせることやおむつを取り換えること、お風呂に入れることなどの子育ての基本も数百回繰り返して、手と耳、鼻などの感覚で身につけていった。子どもが歩き始める時は、転んだりぶつかったりするのが心配となって、首に鈴をつけた。ユンさんは、「外出する時、子ども一人でエレベーターに乗るという危険な瞬間もあった。しかし、彼女たちは、子どもが便器に触れる音に至るまでリビングで聞き分けるほど、視覚以外の感覚を総動員して子どもに神経を注いでいる」と話した。

視覚障害者の親が子どもを育てる最も重要な方法は対話だ。見ることができない代わりに、言葉で子どもを把握することだ。保育園から帰ってきて、ヘアピンがなくなったら、どうしてヘアピンがないのか、誰かと喧嘩しなかったのかを一つ一つ聞く。「水の匂いはどう?」、「風の音を聞いて何を思い出す?」のように、視覚だけに限らない質問も投げかける。

「3家族の共通点は、対話が絶えないということです。これは、子どもの言語能力の向上にもつながります。子供たちは、『鳥がいる』の代わりに『青い翼のはえた鳥が、右側に歩いて行っている』と言います。親の障害がむしろ子どもの強みになるのです」

同書は来月、オーディオブックとデジタル音声図書として、8月頃は点字本としてそれぞれ出版される予定だ。本の表紙のタイトルの下には、「ただのママ」が点字で表記されている。母親の一人は、タイトルを確認し、涙を流した。

「彼女たちも目が見えないだけで、ただのお母さんです。子供と母親はお互いの違いを把握して合わせていく存在です。目の前が見えないすべての『ただのママ』たちが勇気を得てくれればと思います」


金哉希 jetti@donga.com