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名筆の王羲之

Posted March. 04, 2022 08:13,   

Updated March. 04, 2022 08:13

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王右軍とは王羲之のことで、「春香伝」で、李道令が科挙試験を受けるとき、「王羲之の筆法で、趙孟頫体を受けて一筆揮之」したと描写したあの名筆だ。生前の肩書の「右軍将軍」から取った呼称だ。氏はガチョウが大好きだったが、白くてきれいな羽を高潔な士の表象と考えたというほか、ガチョウの動きから書道の運筆技巧を身に付けることができたというが、正確なことは不明だ。

王羲之は、ある道士がガチョウを飼うという話を聞いて、それを買うために訪れた。道士から「道徳経」を書いてくれればガチョウをただであげると言われると、彼は快く応じた。ガチョウを得た彼の浮き立った気持ちを、詩人は、「主人とは別れのあいさつさえできない」ままその場を立っただろうと想像する。

王羲之のこのガチョウへの愛は、正史である「晉書」に記録されていたが、李白の詩が出てからもっと広く知られた。この字をめぐって、詩人は、「精巧で奥妙なその筆跡は、立身の境地」と絶賛するほど、書聖・王羲之に魅了されたようだ。

王羲之が滞在した所々に、墨池(墨色の池)が伝説のように残っている。書道を磨き、筆と硯を洗うために、池の水が真っ黒になるほどだったという。数百年後、唐の劉言史は、「今も墨の池の水には残った墨汁が染み込んでおり、他の泉水とは色が違う」と誇張したりもした。

成均館(ソンギュングァン)大学名誉教授