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月の井戸

Posted February. 26, 2022 08:20,   

Updated February. 26, 2022 08:20

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「鏡の中には音がない。あんなに静かな世の中は、本当にないだろう」。詩人の李箱(イ・サン)が、詩「鏡」に書いた言葉だ。李箱の詩がそうであるように、何か知って書いたような気がする。時には詩を読んでいるうちに、李箱の鏡の話が浮かんでくるからだ。彼の言う通り、詩は本当に静かな世界だ。言語で書かれているので、音が出ない。聴覚的心象があるといっても、それはあくまでも夢の中の声のようだ。それで、詩は「言語の監獄の中に閉じ込められている」とまで言う。

しかし、これとは逆の詩がある。確かに音も色も出ない白黒の活字であるだけなのに、まるで映画のワンシーンを見ているような作品がある。詩の中にダイナミックなものもあり、シーンの切り替えもあり、鳥肌が立つクライマックスもある。タイトルは「月の井戸」。ちょっと見て、穏やかだと思ったら、それこそ間違い。詩の画面は、夜の海を映している。嵐が過ぎ、空も海も静まりかえろうとしている時に満月が登場する。特に月についての描写が優れている。月が空と海の間に出て月明かりを垂らすが、それを「破れた翼」と表現した。下りてきた月明かりから、月は水を飲む。広い海が月に支配される様子が圧倒的だ。そのシーンを見る読者たちも圧倒される。

詩は動かないが、詩を読んだ私の心の中では生きて動く。あの海も、空も、月も心の中で描いては消すことができる。世界を自分一人で作る楽しさ、これこそ詩を読む大きな利益だ。