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刺激に疲れた現代人を癒す小説

Posted February. 05, 2022 08:22,   

Updated February. 05, 2022 08:22

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ソウルのどこにでもありそうな路地に1店の町の書店がある。書店の主人である若い女性ヨンジュは書店中で静かに座って本だけを読む。ヨンジュが気になる町の人々が、少しずつ書店に足を運ぶ。バリスタのミンジュン、作家のスンウ、高校生のミンチョル、主婦のヒジュ…。大小の傷を持つ人々が書店に集まって慰め合う。そうして「休南洞(ヒュナムドン)書店」は安息所になっていく。

作品は、小さな書店を背景に町の人々が互いに慰め合う話を盛り込んだ長編小説だ。昨年10月に電子ブックで出版され、電子ブックのプラットホーム「ミリーの書斎」で関心を引き、先月17日に出版された紙の本は1月第5週にオンライン書店アラジンの総合ベストセラー9位を占めた。初めは成功するかどうか不透明だったが、読者の口コミで人気を得ている。文学評論家よりは読者の人気に力づけられて書店を席巻するという点が、1、2冊合わせ100万部が売れた長編小説『ダラグート夢の百貨店』(ペクトリナイン)シリーズを想起させる。

最近人気を呼んでいる奇抜なジャンル小説とは違って、この作品は平凡だ。刺激的な素材は見当たらない。ゾンビが登場することもなく、戦って勝たなければならない巨大な悪が存在するわけでもない。読者が驚く反転もなく、読者が目を皿にして探さなければならない伏線も多くない。

その代わり小説は、書店を経営するヨンジュと町の住民たちの日常を穏やかに伝える。退屈な小説だと考える人もいるかもしれないが、小説は私たちの人生で重要だが忘れていることに触れる。自分がすることにどのように対すべきなのか。どのように人との関係を持つべきなのか、どんな気持ちで生活を送らなければならないのか。平凡な人物の視線で傷を克服して前に進む方法について語る。「読んでいる間、慰められている感じ」、「日常の疲労回復薬のような小説」と読者が評価する理由がわかる。

読者の心を温かく慰めるヒーリング小説が愛されている。死を決心した女性が生と死の間に存在する図書館で希望を見出す長編小説『ミッドナイト・ライブラリー』(インフルエンシャル)は昨年4月に出版され、25万部が売れた。ホームレス生活をしていた男がコンビニで夜間バイトをする長編小説『不便なコンビニ』(木の横の椅子)は昨年4月に出版され、教保(キョボ)文庫で今年1月第4週、総合ベストセラー2位を占めるほど長く愛されるステディーセラーになった。新型コロナウイルスの長期化で疲れた心のためだろうか。刺激的な素材を前面に出した作品に飽きたからか。様々な理由があるだろうが、息つく暇もなく忙しい世の中で、私たちを慰める作品があるということは幸いだ。重い主題意識や奇抜な想像力がなくても小説はおもしろいということをこの作品を通じて改めて知る。


イ・ホジェ記者 hoho@donga.com