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孤高なる馬の肖像

Posted January. 27, 2022 08:27,   

Updated January. 27, 2022 08:27

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ロンドン・ナショナル・ギャラリーに行けば、凛々しい一頭の馬に会うことができる。18世紀の英国の画家ジョージ・スタッブスが実物大で描いた馬の絵だ。縦3メートルの巨大なキャンパスに一頭の馬が単独で登場する。騎手もおらず、背景も描かれていない。未完成なのか。画家の意図なのか。

スタッブスは絵を正式に習ったことはないが、馬の絵で世界的な名声を得た。死んだ馬を直接解剖して培った彼の解剖学の知識は、他の追随を許さなかった。1766年には『馬の解剖学』という本も出版した。どの動物画家よりも正確で繊細に描いたため、乗馬好きの貴族から絵の注文が殺到した。スタッブスに最高の名声を与えたこの絵は、ロッキンガム侯爵が依頼した。侯爵は英国の富豪の一人で、首相を2度務めた政治家であり、競馬マニアだった。

絵の中のモデルは、侯爵のサラブレッドのホイッスルジャケット。ツヤのあるブラウンの体にクリーム色のたてがみと尻尾を持つこのすばらしい馬は、世界サラブレッドの三大始祖に含まれるゴドルフィンアラビアンの孫だ。純粋のサラブレッド血統だが、ホイッスルジャケットの記録はそれほど傑出したわけではなかった。10歳だった1759年、引退のために最後に出場した競走で優勝した時に初めて全国的な名声を得た。では、侯爵はホイッスルジャケットの輝かしい勝利を記念して肖像画を依頼したのだろうか。それは違う。多くの馬を長く飼育した侯爵は、ホイッスルジャケットの卓越した容貌が純種アラビアン馬の標本であると考え、肖像画に残そうとした。

スタッブスは数ヵ月間、近くで観察し、馬の容姿だけでなく心理まで捉えた肖像画を完成させた。サラブレッドとして生涯つらい訓練を受けたホイッスルジャケットは、引退後にはじめて自由を享受できたのだろう。誰より馬をよく理解した画家は、騎手も背景も大胆に省略することで、美しい馬の存在自体を浮き彫りにした。後足で立ったまま背を向けて正面を見る馬は孤高の目で私たちに問いかけているようだ。あなたは自由か、と。