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咲いているものの使い道

Posted October. 04, 2021 08:27,   

Updated October. 04, 2021 08:27

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「人々は私に尋ねる。何に使うためにそんなに一生懸命数学を研究するのかと。春の野のスミレはスミレに咲いていればそれだけではないだろうか。咲いているものの大切さはスミレの知ったことではない」(岡潔「数学者の勉強」)

夜空を眺め、その果てが分からない「宇宙」という空間の中に存在する「私」を初めて感じた瞬間を思い出す。その畏敬の念と生きているかのように輝く星々の美しさに引かれて天文学を手がけるようになった。こんな私を含め、周囲の天文学者たちがよく聞かれる質問が「天文学をしても意味がない」というものだ。

天文学。ややロマンチックに聞こえるこの学問の使い道は、果たしてどこにあるのだろうか。すばらしい答えを、天才数学者の岡潔が書いた「数学者の勉強」という本から見つけた。事実、分野を問わず学問でその使い道が鮮明に現われる事例は非常に珍しい。たとえスミレはスミレとして咲いていればそれだけであっても、多くの学問は知られている以上に役に立つ。人文学や社会科学はもとより、領域がはっきりしている工学分野も、深く見れば、表面的に知られている必要のほか、多くの使い道がある。

天文学も同じだ。天体望遠鏡で使用する電子結合素子装置(CCD)は、デジタルカメラと携帯電話で使われるようになり、電波天文学観測技術は、磁気共鳴画像(MRI)やコンピューター断層撮影(CT)のような医療映像システムで広く活用されている。医学とともに最も古い学問である天文学は、かつて大洋航海や農耕社会に欠かせなかった。今は衛星航法と天体観測で地球自転速度を正確に測定することで、過去に比べられないほど精密な時間と位置サービスを提供している。無線インターネットの標準であるワイファイ(Wi-Fi)も、ブラックホールから出てくる電波観測信号を分析しようとして誕生した。「咲いているものの使い道」は、見える以上の価値がある。