
「先生、奥さんにご馳走さまでしたと伝えてください」
「食事に関する感謝の言葉は私にすればいい。私の妻のことや名前ですら君の口から言う必要はない」
著者がイエメンのある家庭に食事に招かれた後、体験したエピソードだ。手厳しい助言が続いた。「ここは君が以前いたエジプトではなくイエメンだ。エジプトは忘れてここの文化に慣れるように」
著者は2003年にエジプトに語学研修をし、留学や企業活動を通じて18年間、アラブ地域と縁を結んだ。アラブという単語でよく思い浮かぶのは、イスラム教、石油、戦争などだ。このような固定観念を取り払ってこそ、アラブ人が作った長い歴史と文化、社会の実体に迫ることができるというのが著者の主張だ。
本は、エジプト、イエメン、イラク、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の5ヵ国編で構成されている。同じイスラム国家でも、一つの目で見てはならない。アラブ地域22ヵ国は、宗派や部族、さらに家門によって文化と慣習が異なる。
著者は、異邦人の目で見て驚いた光景を通じてこのような違いを伝える。イエメンから出発した飛行機で目を除いて顔全体を黒い布で覆う「ニカブ」を着用した女性たちが、ドバイに到着するやいなや、これを脱いでカバンに押し込んだ。
他の文化圏の人が見ると、アラブの女性たちが巻く布はみな似ているように見えるが、覆う程度や色などによってヒジャブ、チャドル、ブルカなど多様で、使わない地域もある。
金甲植 dunanworld@donga.com