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ウィットの力

Posted February. 04, 2021 09:35,   

Updated February. 04, 2021 09:58

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豪華な台所で2人の男が料理をしている。左のやせた男は料理人で、右の腹の出た男は枢機卿だ。年配の枢機卿は、自分が作ったソースで若い料理人を驚かせている。ソースを味わった料理人は「どうやってこんな味を!」と信じられないという表情だ。鍋を手に持った枢機卿は遠くを見つめ、満足気に微笑を浮かべている。

 

19世紀のフランスの画家ジャン・ジョルジュ・ヴィベールが描いた絵は、21世紀「料理放送」のワンシーンのようで面白味を与えるが、1つ疑問がある。法王に仕える最高位聖職者がなぜ台所で料理をしているのか。今でこそ料理する男はありふれているが、19世紀なら話は違う。特に、上流層の男性や高位聖職者が台所に入ることは想像できない時代だった。ところでこの枢機卿は、鮮やかな赤い服の上にエプロンをつけ、料理の腕を披露している。

実は、ヴィベールがこの絵を描いた目的は、聖職者の偽善的な生活と腐敗した上流社会を告発するためだった。ヴィベールが活動した時代は、普仏戦争やパリコミューン、ナポレオン3世の廃位、第3共和政樹立など君主制から共和制に移るフランス社会の政治的激変期だった。当時の高位聖職者はほとんどが王族や貴族出身で華やかな生活をしていたので、共和主義者には批判の対象だった。このようなム―ドの中、ヴィベールは聖職者の風刺画で大きな名声を得た。ヴィベールの絵に登場する枢機卿や主教は料理をしたりカード遊びをし、占い師に占ってもらったり、増えた体重のためにダイエットをするなど、宗教生活とはかけ離れた姿で描かれている。

監獄に送られそうな不敬な内容だったが、ウィットとユーモアが漂ったヴィベールの絵は、米国にまで伝わって大変な人気を呼び、聖職者も好んだ。このように批判の当事者まで魅了したヴィベールの風刺画は、批判よりも強力なウィットの力を示す。今日の時事漫評のように。

美術評論家