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「核パンチ」タイソンの復帰戦への懸念

Posted May. 22, 2020 07:53,   

Updated May. 22, 2020 07:53

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最近マイク・タイソン(54・米国)の復帰が世界ボクシングファンから関心を集めている。1986年に20歳で、歴代最年少のプロボクシング・ヘビー級チャンピオンになったタイソンは通算50勝(44KO)6敗を記録して2005年に引退した。

恵まれなかった幼年期を克服し、世界的なスターになったタイソンは一時は8000億ウォンを超える大金を稼いだそうだが、すべてを使い果たして性暴行の罪で3年間を刑務所に収監されたこともある。波乱に満ちた人生を歩いたが、今は医療用大麻関連のビジネスをしているとされる。

タイソンの復帰が注目を集めたのは、今月初めてにタイソンが練習模様を撮影した映像をソーシャルメディア(SNS)に投稿してからだ。動画の中で、全盛期を彷彿とさせる素早い動きと強いパンチ力を見せては、「俺は帰って来た」と叫んだ。タイソンの復帰戦の最有力相手に、1996年と1997年に2度もタイソンと世界ボクシング協会(WBA)ヘビー級タイトルマッチを戦ったイベンダー・ホリフィールド(58・米)が挙げられている。ホリフィールドも最近、タイソン側と対決について話し合っていることを公開した。タイソンは、ホリフィールドとの2度の対戦で敗れており、とくに1997年の対戦ではホリフィールドの耳を噛みちぎり「核歯」の汚名を受けた。その二人による3度目の対戦を楽しみにするファンも多い。

しかし、二人の対決を見る視線は必ずしも好意的ではない。二人の年齢のためだ。若い選手も試合でまともにパンチを食らったら致命傷を負いかねないのがボクシングだ。50代半ばと後半のタイソンとホリフィールドが対戦する場合、試合中に最悪の事態が起こらないとも限らない。このため、二人の対決を止めるべきだという声も上がっている。とくに、その危険性を良く知る関係者たちの間で、こうした声が出ている。代表的な格闘技団体であるUFCの代表でタイソンの友人であるダナ・ホワイト氏(51・米)は、「お願いだからタイソンは復帰しないでほしい」と話した。現在、WBAと国際ボクシング連盟(IBF)、世界ボクシング機構(WBO)、国際ボクシング機構(IBO)のヘビー級統一王者のアンソニー・ジョシュア(31・英国)のマネジメントをしているプロモーターのエディ・ハーン氏(41・英)は最近、英国メディアとのインタビューで「タイソンの復帰関連の仕事を頼まれたが応じなかった」と明らかにした。ハーン氏は「タイソンの年齢の選手をリングに上げるのは無責任なことで、道徳的でない」と言い切った。

28歳に引退し、38歳で復帰したジョージ・フォアマン(71・米)が1994年に45歳で再びWBA・IBF統合王者になったことがある。しかし、一度引退して復帰した大半の選手は、年齢の壁を克服できなかった。ボクシング史上最も偉大なテクニシャンに挙げられたWBCスーパーミドル級王者のシュガー・レイ・レナード氏(64・米)も40歳に復帰したが、とことんKO負けを喫しており、リングの永遠なるレジェンドのモハメド・アリ氏も1979年に引退して40歳を迎えた1980年の復帰戦でラリー・ホームズ(71・米)に無残にもTKO負けした。2016年に亡くなったアリ氏は、一生をパーキンソン病を患ったが、この時ホームズに打たれた強力なパンチが影響を与えたという見方がある。

タイソンはリングを離れて15年、ホリフィールドは9年目になる。とっくに全盛期が過ぎている二人が復帰しようとしている理由について、多くの人は「お金ため」と受け止めている。超有名人だった二人のリベンジには巨額のファイトマネーがかけられるものと予想される。ホリフィールドもタイソン同様、巨額を稼いだがビジネス失敗などで破産し、大変困難な生活をしている。

二人の対決を批判的に見る人たちは、「いくらお金が入るとは言え、選手を危険に追いやるような対戦を組んで良いのか」と疑問を示す。他方では「対戦するかどうかは、選手の自由だ」との声もある。

タイソンとホリフィールドの対戦を取り巻く論争は、大体はお金と興味を振りかざせば何をやって良いのか、またやっても良いのならどこまでやって良いのか、という問題への発展している。様々な見解があるが、結局論争の基準は選手の安全を守れるのかどうかに焦点が絞られるべきだ。「守るべき線」は、外ならぬ選手の安全である。二人の対決を実際に実現させたいのなら、最大限の安全装置が先決だ。