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米国はなぜ古臭い間接選挙制を維持するのか

米国はなぜ古臭い間接選挙制を維持するのか

Posted February. 19, 2020 08:46,   

Updated February. 19, 2020 08:46

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9ヵ月後に迫った米大統領選を見ていると、幽体離脱に陥ったような気分になる。「宣言代議員」、「勝者総取り」、「党員集会」、「閉鎖型プライマリー」といった用語は乱数表のようで、間接選挙の中層構造である制度自体もとても複雑だ。何よりも技術が発達した時代に、死票が発生して世論の歪曲の危険がある間接選挙制をなぜ維持するのか疑問だ。

今月3日と11日、米中部アイオワ州と北東部ニューハンプシャー州で開かれた政権共和党と野党民主党の候補者選びを見守り、なんとなく理由を察することができた。

旅行作家で有名なアイオワ州出身の著述家、ビル・ブライソンは、ベストセラー「ロスト・コンチネント」で、故郷を「電話帳2冊を置いて立つと、全部見える所」と描写した。山や高層ビルディングがほとんどなく、四方が地平線のように平坦で、とうもろこし畑がいっぱいのアイオワ州の状況を滑稽に評した。ニューハンプシャー州も、エクセターやセントポールのような名門私立学校、アイビーリーグに属するダートマス大学が有名だ。勉強しかすることがない所ということだ。

ニューヨーク、ロサンゼルスのような東・西部海岸の大都市から見れば、2ヵ所いずれも「ド田舎」イメージがあることは否めない。そのうえ、トランプ大統領と民主党の支持率トップ圏のサンダース上院議員は、いずれも最大都市ニューヨーク出身だ。ブルームバーグ前ニューヨーク市長の故郷もボストンだ。

 

主な候補のうち田舎生まれは、人口10万人の小都市であるインディアナ州サウスベンドで生まれて育ったブーティジェッジ氏。彼も成人になった後は、ボストン近郊のハーバード大学に通い、マッケンジー・コンサルティングのシカゴ事務所で働き、かなりの期間、大都市で暮らした。

3億3千万人の米国人を代表する候補の大半が少数大都市にだけ馴染んでいる状況なのに、大都市ではない所で大型政治イベントをしなければどうなるか。人口が少ない州の疎外現象はますますひどくなるだろう。ここの有権者は、候補と近くで向き合う機会を得ることができず、メディアの関心が減り、アイオワ州とニューハンプシャー州が本当にとうもろこしと紅葉だけ有名な場所と考える過小表象が現れるという意味だ。

50州538人の大統領選挙人団を単純に人口比例だけで配分せず、いくら小さな州でも少なくとも3人を保障した理由も同じだ。人口1位のカリフォルニア(3950万人)は50位のワイオミング(58万人)より住民は68倍多いが、選挙人団は55人対3人で約18倍だ。

このように米国人は、現大統領選の制度が候補に巨大な領土のすべての有権者との接点を広げ、一部の大型州が国家の大事を思うままにしないようにする「牽制と均衡」の根幹だと信じる。両党が強いて首都ワシントンから遠いアイオワ州とニューハンプシャー州で大統領候補選びを始め、民主党がアイオワ州の党員集会の時、史上初の開票遅延事態を経験したにもかかわらず、「早くて透明で効率的な直選制を導入しよう」という世論が起こらないことも同じ脈絡で理解できる。民主主義に反するような間接選挙制が各種論議にもかかわらず約240年間も維持された秘訣であり、憲法2条が間接選挙制を保障する理由だ。

交通と通信手段の発達でごく少数の大都市の集中現象がますますひどくなることからも、少数州の権利を保障する現制度が相当期間続くものと予想される。

1人1票の直選制が導入されれば、両党の候補はカリフォルニア、テキサス、フロリダ、ニューヨーク、ペンシルバニアなど人口1千万人以上の州だけ訪れ、バーモント、ワイオミング、アラスカのようなところは省みることもない可能性が高い。4年前の大統領選で、民主党のヒラリー・クリントン候補は、民主党の支持勢力が強いウィスコンシン州(580万人)での勝利を確信して訪れなかった。そのため、選挙人団10人およびホワイトハウスの主の座をトランプ候補に明け渡した。

何よりも、大統領の選出手続きと政府与党の変更が、各種制度と法規が根本から揺れ動く事態につながらない米国の社会構造こそ、間接選挙制維持の最大の背景ではないか。米国人でもないのに、いつも米国人以上に大統領選の状況と結果を注目しなければならない他国籍者の感想だ。


河貞敏 dew@donga.com