Go to contents

悪魔のエージェント

Posted December. 27, 2019 08:33,   

Updated December. 27, 2019 08:33

한국어

柳賢振(リュ・ヒョンジン)をトロント・ブルージェイズに案内したエージェントのスコット・ボラス氏は球団関係者には「悪魔」と呼ばれる。絢爛な交渉術で、いつも市場価値以上を払わせるからだ。時間を遅らせて球団を焦らせたり、球団同士で争奪戦の構造を作っては値を上げる。大型契約のためにスカウトやフィジカルトレーナー、スポーツ心理学者はもちろんのことコンピューターエンジニアや経済学者まで雇用している。そして選手たちは、ボラス氏のことを「天使」と呼ぶ。

今回の柳賢振とトロントの契約は、金額面では成功作だ。公言した1億ドルには及ばなかったが、FA市場の雰囲気からすれば、4年8000万ドルも好条件だ。5万ドルほどの差にも交渉を打ち切ったというボラス氏の武勇伝からすれば、8000万ドルは彼が引き出せる最高金額だったはずだ。トロントにとってボラス氏は確かに悪魔だった。

ところが、ボラス氏が柳賢振に天使だったは疑問だ。大金はもらえるだろうが、そのために選択したチームには疑問がある。選手にとって、お金がそのまま自尊心だという。だからボラス氏のもとに集まり、結果的には満足している。しかし、朴賛浩(パク・チャンホ)や秋信守(チュ・シンス)ら、過去にボラス氏を通じて大型契約を結んだ韓国人ビッグリーガーたちの例を見ると、成功した契約が何なのかを改めて考えざるを得ない。

エージェントの役割は大きく二つある。選手が技量を最大限発揮できるよう管理し、市場を把握して選手の価値を最大値まで引き上げる。この二つが満たされれば、最高の契約になる。ところが、ボラス氏は、お金だけに集中する。選手の適用要因を巡って球団と駆け引きをしたという話は聞いたことがない。だから、お金だけで交渉しようとする相手とだけ交渉することになる。異邦人の外国人選手にとっては適応(管理)が重要問題だけどだ。

ロサンゼルス・ドジャースのエースとして活躍した朴賛浩を思い浮かべると、今の存在感には物足りなさを感じる。2001年にテキサス・レンジャーズと結んだ大型FA契約(5年6500万ドル)が「食い逃げ」に終わったからだ。負傷が問題だったとは言え、負傷をきちんと管理できなかった環境のせいが大きかった。現地のスカウトたちも「ドジャースの管理に慣れていた朴賛浩がテキサスでは痛みを訴えることもできず負傷が大きくなったし、球団とメディアの批判に自信を失った」と振り返った。秋信守も大きく変わらなかった。ボラス氏が取り付けた巨額契約が最悪と評価されながらも、選手たちは自尊心と名誉に大きな傷を負った。建前では稼いだが、内実では損した。

ボラス氏の選択は、今度も変わらなかった。トロントは打者が強いアメリカンリーグのチームで、強豪が多い東地区に所属する。ホーム球場も打者に有利だ。柳賢振は負傷のリスクを抱えている選手で、今季に多く投げたため、後遺症も排除できない。ところが、カナダを本拠とするトロントは、ドジャースのようなアジア選手を管理するノウハウを持っていない。アジア選手を良く知っているチームは、どうすれは最高の能力を発揮できるかを知っている。待ってくれなければならないときは待ってあげ、必要とするものを満たしてあげる。そうしたことが成績につながるのだ。

先輩たちの例を見守った柳賢振は、違う視点を持っているかもしれないが、ボラス氏と手を組んだ以上、彼のペースから外れることはできなかった。一時は、「柳賢振がロサンゼルスと近い西部チームを希望している」と言う報道もあったが、「ソウルからはどこも遠い」というボラスの一言で状況は片付いた。

ボラス氏が柳賢振にとって天使か悪魔かは、柳賢振の手にかかっている。今とは異なる環境で4年間評価を受けるだろう。韓国人投手のFA最高額を記録したことよりは、FA契約を成功裏に全うした初の韓国人選手として記憶されることを望む。それこそが自尊心なのだ。


李恩澤 nabi@donga.com