Go to contents

ワーホリ女子大生の無念の死

Posted December. 03, 2013 03:13,   

한국어

英有名大学の博士課程に娘を留学に送り出した父親は最近、急きょ娘を帰国させた。大学から電車駅でいくつか離れているところに住んでいる娘に、ある日下校の途中、足を挫く出来事が起きたという。近くにいた1人の若者が助けてくれた。自宅まで送るといわれたが、彼女は断った。見知らぬ人に、どこに住んでいるのかを教えことは、外国生活ではタブーとなっている。連絡先だけやり取りしたが、後で、安否を尋ねる電話がかかってきたため学校の周辺で、コーヒーを一緒に飲んだ。ところが、それが終わりではなかった。その青年は、引き続き電話をかけてきた。頻繁に携帯電話にメールも送ってきた。娘が避けるほど、青年のアプローチはさらに執拗になった。突然キャンパスにまで姿を現した。その青年はストーカーへと変わった。会わなければ、危害を加えられるかもしれないという不安が襲ってきた。娘は、ソウルの父親に助けを求めた。大学教授の父親は、休学し、直ちに帰国するようせきたてた。1人での留学生活の厳しさについて詳しく知っていた父親は、娘が韓国に戻ってきてからようやく安堵した。娘を米国の大学に行かせるか、それとも韓国で勉強させるかを巡り、悩んでいる。

記者の3年弱のワシントン特派員の生活で、頭から離れなかったのは、家族の安全問題だった。ある日、ワシントン市内で遅めの夕食会に参加した後、運転して帰る途中、道を間違ったことがある。閑静な町で出くわした見知らぬ人のぞっとするような目つきは、今でも忘れられない。北バージニア州の安全な町で家族と一緒に暮らしていたが、その不安は、特派員の生活をしている間中、消えることはなかった。住居が一定である駐在員や外交官もこのような気持ちになるのに、一時的滞在者はどれほどだろうか。昨夏、ペンシルベニア州のハーシーチョコレート工場で働いていた中国や東欧出身の大学生数百人が、街頭に飛び出してきた。米紙ニューヨークタイムズがこれを大きく取り扱った。劣悪な労働環境や不当な待遇への抗議デモだった。夏休み前後の4ヵ月間働き、1ヵ月間旅行するプログラムに参加したが、英語を学べるという期待はつかの間、一時間当たり7ドルという薄給の雑役にこき使わされた。

1ヵ月半前、ときめく気持ちで、豪州に向けワーキングホリデーに行き、地元の若者に殺害された釜山(プサン)の女子大生のことで、胸が痛む。犯人は、19歳の尻の青い豪州の若者だった。英語も学び、金も稼いで旅行をするという夢だけ失っても、これほど悲しくはないはずなのに、命まで落とすなんて。彼女は、見知らぬ外国の地で、それも午前3時30分という暗い明け方に、1人で働きに町に出た。何時、誰もが犠牲者になり得る深刻な問題だ。その女子大生は、豪州を釜山や済州道(チェジュド)ぐらいだと思ったようだ。午後5時になればきっかり退社し、自宅に直行すること、暗い夜は絶対、1人で歩かないこと、見知らぬ人に出会ったら、相手の敵意を和らげるために、わざと愛想笑いを浮かべること。多文化社会の米国の都市では、よく目にする姿だ。

ワーキングホリデーに参加する若者(ワーホラー)らが、年間数十万人に上る。今日も大学生らは、「世界は広い」と、荷物をまとめているかもしれない。しかし、英語圏の米国や豪州、英国で、韓国人の大学生が、きちんとした仕事を手にするのは、至難の業だ。米国の大学生らが、韓国で英語塾の講師として月200万ウォンを簡単に稼ぐのを、我々は期待できない。皿洗いであれ、使い走りであれ、英語を学ぶために、外国に出て行く学生も問題だが、対策の無い政府は、さらにあきれるばかりだ。留学ができるというわけでもなく、1年間、交換留学生としても行けないほど、経済的余裕のない家庭の大学生らが、英語能力を育むため、命までかけなければならないのか。なりふり構わず、荷物から先に包むことではない。女性なら、なおさらそうだ。1人の女子大生の死が、あまりにも無念で、気の毒だ。